
台湾・新竹市在住の闕さんは、おととし出張先の上海のホテルで朝食をすませると、隣の椅子に持ち主のわからないトランクが置かれたままなのに気がついた。そのまま10分ほど待ってみたが誰も現れる様子はない。中身は大量の人民元に米ドル、それに契約書だった。そのうち仕事先に出るため呼んであったタクシーが到着。そこで、闕さんはトランクが簡単に開けられ手がつけられたりしないようビニール袋に入れて口を縛り、「中身は私も確認してあるから」と念を押し、自分の連絡先とともにホテルのフロントに預けた。
それからほどなくして落とし主から無事トランクを手にしたとの電話が入り、闕さんはようやくほっとした。落とし主は日本人の鍛(かじ)邦雄さん。翌日、「重要書類が見つかって非常に助かった。ぜひしっかりお礼がしたい」と申し出た。しかし、闕さんは「やるべきことをやったまで。お礼をしていただくほどのことではありません」と断った。