(高雄 5日 中央社)高雄市文化局は4日、日本統治時代に建てられた「逍遥園」の土地約2ヘクタールの移譲に国防部が同意したと発表、文化部による修復費用の支援を求めたいとしている。

「逍遥園」は高雄市新興区の中心部に程近いヨーロッパ田園風の建築。
1939(昭和14)年に日本の宗教家、大谷光瑞(こうずい)伯爵(1876-1948)がアジア11カ所の別荘の1つとして台湾に建てたもので、宮大工の二角幸治郎により建造された。大谷氏は浄土真宗本願寺派第22世法主で大正天皇の従兄弟にあたり、孫文(孫中山)の中華民国顧問でもあったとされる。

高雄市では逍遥園を歴史建造物に指定し、国立高雄大学建築学科の准教授、陳啓仁さんに調査を依頼。先日は二角氏の息子、龍蔵さんが招かれ当時の工法や建築素材について調査が進められた。逍遥園は日本の一般的な伝統建築と異なり、骨組みには強度の高い防空用セメントを使い、また、台湾の高温多湿な気候を考え虫食いを防ぐ紅檜(台湾ベニヒノキ)や扁柏(台湾ヒノキ)、南洋諸島産の鉄木や柚木(チーク)が使用されているという。記録によると大谷氏は当時、逍遥園を私塾兼実験用農家として利用。
若い男女の信者らを集めて各国語や経済、礼儀作法を学ばせ、西洋式の英才教育を行っていたが戦争で頓挫した。

調査と再利用計画の立案を委託されている高雄大学の陳さんは逍遥園を今後、市民農園として生まれ変わらせたい方針だが、建築の老朽化が進行しており、高雄市による速やかな修繕工事が望まれるとしている。

(王淑芬/編集:谷口一康)