(台北中央社)台湾で女性が殺害された事件で、香港に逃亡した容疑者の香港人の男が台湾警察に出頭する意向を示していることを巡り、台湾の政府は、香港政府に「逃亡犯条例」改正案を正当化する狙いがあるとして反発している。蘇貞昌行政院長(首相)は22日、「台湾は騙されない」と述べ、個別の事件を利用して政治的誘導をしないよう香港政府に呼び掛けた。


男は昨年2月、交際相手の香港人女性を台北市内で殺害した疑いがある。この事件は、香港政府が香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案をまとめる契機となった。男は別の罪で香港で服役しており、23日に出所予定。

香港政府トップの林鄭月娥行政長官は19日、男が台湾への出頭を決めたと発表した。香港政府は、男の出頭は自発的なものであり、政治的誘導ではないと強調。事件の発生地点が台湾であるのを理由に、香港に管轄権はないと主張し、合法的に実施可能な協力を台湾に提供する姿勢を示した。
その半面、台湾と刑事分野で協力する法律がないことを強調した。

台湾の対中国政策を担当する大陸委員会や蔡清祥法務部長(法相)は21日、香港側の説明には矛盾があると批判。男の出頭は強制的なものだとの見方を示した。管轄権については、男は香港ですでに殺害を計画していたとし、香港にも管轄権はあると主張。香港政府が優先的に審理すべきだとしている。

蘇行政院長は21日、出所後に香港で自由の身になれる男が台湾に突然やって来て殺人の罪に向き合おうとするのは道理に合わないと言及し、国家の安全や主権に厳しく目を光らせ、台湾を守っていく姿勢を示した。


(陳俊華、顧セン、張謙、劉世怡/編集:名切千絵)