(東京中央社)安倍晋三元首相が8日、死去した。2020年に亡くなった李登輝(りとうき)元総統とは「師弟関係」と表現されるほど懇意にしており、長年にわたって台日関係の増進に取り組んでいた。


06年に首相に初めて就任するも、翌年には体調不良を理由に辞任した安倍氏を励まし続けた人の一人が、李氏だった。憲法を改正してアジア最高のリーダーとなり、日本がアジアをけん引するよう、提言したとされる。

その後の12年には第2次安倍政権が発足するが、李氏は14年に受けた日本メディアのインタビューで、安倍氏の金融政策や東南アジア歴訪を高く評価している。

安倍氏もまた、台湾を良き友人とし、世界保健機関(WHO)と同総会への台湾の参加支持を訴えた他、日本政府による台湾に対する新型コロナウイルスワクチン供与の実現を後押しした。

李氏が01年に心臓病治療のために訪日した際や、07年に李氏の兄、登欽氏が祭られている靖国神社を参拝した際にも安倍氏は手助けをしたとされる。

李氏が15年に衆議院議員会館で講演をした際には、安倍氏は李氏の宿泊するホテルを訪れて面会。
李氏は自らが「冷静 謙虚」と揮毫(きごう)した色紙を贈った。

安倍氏は台湾の戦略的地位の重要性を熟知しており、民主主義や自由、人権の価値観を共有する台湾を世界の孤児にして、中国の脅威を受けさせてはならないと考えていた。

「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」とする発言だけでなく、今年4月には米紙ロサンゼルス・タイムズに、米国は台湾有事の際に、防衛の姿勢を明確にすべきだと主張している。

李氏の死後、森喜朗元首相を団長とする弔問団が台湾を訪問。超党派議員連盟、日華議員懇談会の古屋圭司会長によると、安倍氏は電話で直接森氏に訪台するよう要請したという。

弔問団には安倍氏の弟、岸信夫氏もおり、安倍氏は岸氏に遺族に向けた手紙を託し、李氏と台湾への思いを伝えた。


李氏と共に手を取り合い、台湾と日本の民主主義を守り続けた安倍氏。台湾を訪問して墓参りを検討していたとされるが、かなわなかった。だが、安倍氏の台湾に対する熱い思いを、台湾人が忘れることはないだろう。

(楊明珠/編集:齊藤啓介)