その代表が『かっぱ』だ。

東北から九州まで幅広く分布、各地の川や水辺に生息していたと言われている。
埼玉県志木市も、かっぱの物語が伝わる地域のひとつ。
昔、近くの川にかっぱがすんでおり、人や馬を水中に引っ張り込むなど悪さを働いていた。ある日、かっぱが村人に捕まり、焼き殺されそうになっていたのを地元の和尚が助けると、それ以来、悪さをすることはなくなった。
本当にかっぱはいたのだろうか? 街の人たちに尋ねると「伝説だから」と苦笑い。
しかし実は、かっぱと災害との関係は深い。
「かっぱの言い伝えが残る地域の川は過去に氾濫した記録があります。かっぱは氾濫を鎮め、水を治める神として祀られてきました」(畑中氏)
そして、かっぱの正体は「実は水害や水の事故の水死体ではないか」とも言われている。
「死者の姿を畏れ、かっぱという架空の生物に重ねたのではないでしょうか」(畑中氏)
志木市でも市内を流れる柳瀬川、荒川などが大雨のたびに氾濫。同市宗岡地区は荒川沿いにあり、明治時代の大雨では一帯が水没、8メートル超の高さの水がきた。周辺はたびたび水害に悩まされてきた。
■大雨の夜、裏山から聞こえる不気味な声
かっぱ以外にも水害にまつわる民話は多い。東海地方の木曽川沿いには「ヤロカ水」という話が伝えられている。
昔、大雨の夜、ある村に“ヤロカヤロカ(欲しいか欲しいか)”という不気味な声が聞こえた。それに対して村人が“ヨコサバヨコセ(もらえるならよこせ)”と答えたところ、押し寄せる水にのまれてしまった。