いよいよ立合い。2人とも手もつかず鋭く立ったが待ったナシ! 琴光喜が右脇を差して下手投げを食らわそうとするものの朝青龍には効かず、頭を琴光喜の胸にしっかりつける。そのまま土俵中央に止まる2人に場内から拍手が起こるほどの大相撲になったが、最後は土俵際まで追い込んで、寄り倒して朝青龍の勝ち。
その瞬間またウオオオオオオ!と、かつての本場所のような歓声が起こる。
朝青龍が起き上がる琴光喜に手を貸して、2人は腰をポンポンと叩き合い、お互いの健闘を称えた。そして朝青龍はかつて国技館で批判されたこともあるガッツポーズをカメラ目線でこれでもか! と決め、勝利に酔いしれた。見事な8戦全勝!
■「相撲道」が胸に響く
もう、この頃には見てるこちらは涙がとめどなくあふれた。11月からずっと、私たち相撲ファンの心はズタボロに叩きのめされてきた。もう相撲なんて見ないほうが幸せかも? なんて思うことさえあった。
それがこの清々しい、ひたすら相撲が好きだ! という純粋な愛にあふれた一番に、ああ、相撲って素晴らしい! と心から思えて喜びに震えたのだ。
取組後のインタビューで朝青龍は「相撲はこれが人生最後なんで、お別れします。もう(土俵に)絶対上がらない。人生で残ってた相撲(への想い)、夢に出てくることとか、この土俵に残して、本人ダグワドルジに戻ります」と言った。
琴光喜も「本当にこれで、気持ちよく引退できました」と言い、2人ともこの一番で区切りをつけ、人生最後の相撲だと実に清々しい顔をする。ツイッターには「ありがとう」「救われた」「しあわせだ」という声があふれた。