「起きていると首がずっと回っているから、寝ているしかないんです。そのうち首からパキパキと音がして、すっごく痛いんです。まっすぐ歩けんで、後ろに引っ張られてドブに落ちよるんです。家の中でも何度も転倒して、歩道から車道に出てしまいそうになったことも。友達や娘に支えてもらわんと、ひとりで出歩くこともできませんでした」
という吉田さん。'14年7月に、下関市内の脳外科クリニックを受診した。
「不随意運動があると認めてくれ、関門医療センターへ診療依頼の連絡をしてくれたのですが、神経内科からは“何度診ても診断は変わらない”と1度も診ていない医師から返答があったんです」
すがる思いで受診した隣県、福岡市内の病院の脳神経外科で、初めて『遅発性ジスキネジア・ジストニア』と診断が下された。
順天堂大学附属浦安病院のリハビリテーション科科長で同大学医学部神経学講座教授を併任する林明人医師は、
「平たく言えば運動があるものがジスキネジアで動きのない異常な筋緊張がある場合はジストニアになる。病態が非常に似ているため混同されて使われることもある。
どちらの症状も局所にとどまるものから全身に及ぶもの、軽度の症状から歩行困難になる場合と症状の程度は幅広い。これらの専門領域は神経内科であり、症状が出た場合には早期に受診することで多くは進行をとどめることができる」
と説明する。
■カルテに書かれた不必要な情報
だが、その専門の神経内科医に見逃されてしまった吉田さんの身体はボロボロ。'15年2月に宇部市内の病院に検査入院したところ、頸椎椎間板の変形、頸椎の狭窄、筋断裂、筋断裂に続発した血腫、筋膜の損傷、筋委縮などが判明した。