ふたりの朝デートは、この店だけではない。同じく下北沢にある喫茶店『セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ下北沢店』の常連客も夫婦との日々に思いを馳せる。
「よく朝8時過ぎにふたりで犬を連れて来てましたね。朝に来る常連さんは、みんな柄本さん夫婦と顔見知りだから、亡くなった翌日は泣いている人もいましたね……。和枝さんは、柄本さんがお仕事のときは、ひとりで来ることもあって“ちょっと、グチ聞いてよー”なんて年末の忙しさをみんなで話したこともありました」(常連客のひとり)
下北沢の人々に愛されていた和枝さんを、誰よりも愛した柄本。
「和枝ちゃんと初めて知り合ったのは21歳とか22歳でしたかね。さっきもみなさんが“かわいい、かわいい”と言ってくれまして、ありがたいなと思っています。たぶん僕がいちばんかわいいと思ったんだと思います。ひと目惚れでしたから。その人と一緒になれて……子どもが3人できました。親の口から言うのもなんですけど、3人とも思いやりのある、いい子どもたちです」
お別れ会で柄本がそう語ったように、前出の佐々木さんもこう話す。
「時生さんは姪っ子が大好きみたいで、だっこして佑さんと来てくれています(笑)」
ふたりが育んだ下北沢との親密な関係は、子どもたちに受け継がれている。