■撮影現場での苦悩

「『世界に向けて核廃絶を宣言できるのは日本しかない。その思いを込めて作る』と、東宝から下知が下った。ゴジラは、単なる怪獣映画ではないんですね」



 撮影時には、こんなエピソードもあったと明かす。



「目の前にゴジラがいる──と言われても、後から編集で合成するわけだから、ゴジラがどれくらいの距離感で迫っているのか、どんな雰囲気なのかわからない。生意気にも本多猪四郎監督に伝えると、監督も悩んでいた。前例がないから、みんなわからない。それでできあがったのが、絵コンテ。僕のひと言がなければ、この時代に絵コンテは生まれていない(笑)」



 また、生身だからこそのよさもあると語る。



「監督が、『あの雲があるところにゴジラの頭があるって想像して』と指示を出すわけ。その後、エキストラの演技指導をするんだけど、戻ってきてカメラを回そうとしたら、さっきの雲が流れてなくなっている! (笑) みんな、どこを向いていいかわからなくなったり、試行錯誤の連続。CGにはないモノづくりの醍醐味があったから、記憶に残るんだよね」



 試写の後、宝田さんは号泣したという。製作時の苦労が蘇ったというよりも、こんな理由からだ。



「ゴジラがかわいそうで仕方なかった。ゴジラ自身も、人間のエゴイズムによる被害者だからね」



 そんな『ゴジラ』は、1作で観客動員数961万人を誇る大ヒットを記録した。



 ゴジラの立場にも心を寄せ続けた宝田さんは、その後、ゴジラシリーズに欠かせない存在となった。