【英国ドラマ】アガサ・クリスティー原作『ABC殺人事件』マルコヴィッチ版ポワロでイギリスの闇を描く

アガサ・クリスティーの大ヒットミステリー小説『ABC殺人事件』が、BBCでドラマ化されました。名探偵ポワロシリーズの中でもエンタメ性の高い本作。哀愁漂う新ポワロを演じるのは、アメリカ人俳優のジョン・マルコヴィッチ。脚本を担当したサラ・フェルプスが加えた新解釈とは?

アガサ・クリスティーの小説を、再度映像化するというBBCの試み

英国ミステリーの女王、アガサ・クリスティーの小説を、BBCが新たにドラマ化していくという挑戦的な試みがおもしろい。

クリスティーのミステリー小説は、世界各国で翻訳され、推定20億冊という驚異の売り上げ数を誇る世界的ベストセラー。特に、『名探偵ポワロシリーズ』と『ミス・マープル シリーズ」は、今まで何度も映画化されドラマ化もされてきました。

その中でも、『名探偵ポワロシリーズ』を、新たなキャスティングでドラマ化するというのは、かなり勇気のいる挑戦だと言えるでしょう。ポワロシリーズのドラマ化には、デビッド・スーシェ主演の『名探偵ポワロ』(1989-2013)という決定的な名作がすでに存在しています。
デビッド・スーシェが演じたポワロは、世界中のクリスティーファンを納得させる完璧な出来栄えであり、彼を超えるポワロは今後出現しないであろうと言われているからです。

【英国ドラマ】アガサ・クリスティー原作『ABC殺人事件』マルコヴィッチ版ポワロでイギリスの闇を描く

LONDON, ENGLAND - DECEMBER 13: (L to R) Sarah Phelps, John Malkovich, Tara Fitzgerald, Alex Gabassi, James Prichard, Damien Timmer and Anita Rani attend a special screening of new BBC One drama "The ABC Murders" at the BFI Southbank on December 13, 2018 in London, England. (Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images)

本作『アガサ・クリスティ―ABC殺人事件』は、デビッド・スーシェ版のポワロとは一線を画しています。
サラ・フェルプスという脚本家が、あえて既存のポワロ像ではないポワロ作品を作ろうとしていることが感じられるのです。

クリスティーの小説をサラ・フェルプスの脚本でドラマ化する試みは、BBCが2015年に放送した『そして誰もいなくなった』からスタートしました。

アガサ・クリスティーのミステリー小説は、意外な人物が犯人であることが多く、そのエンターティメント性が高く評価されています。しかし、小説の背景には、戦争、精神疾患、移民、貧困など、小説が出版された当時のイギリスの世相が色濃く反映されているのです。興味深いのは、当時の社会背景が、現代のイギリスの状態と似ているという点。
サラ・フェルプスの脚本は、クリスティー作品の持つエンターティメント性だけではなく、小説の中に込められた社会背景について、深く掘り下げた内容になっています。

デビット・スーシェ版『名探偵ポワロ』が、超一流のエンターティメント作品であるならば、BBCの新クリスティーシリーズは、クリスティ作品の持つ「闇」の部分を深く掘り下げた社会派ミステリーに仕上がっていると言えるでしょう。

サラ・フェルプス脚本のBBCクリスティシリーズ

『そして誰もいなくなった』(2015)
『検察側の証人』(2016)
『無実はさいなむ』(2018)
『ABC殺人事件』(2018)

【新解釈】ジョン・マルコヴィッチ版、哀愁ただよう新ポワロ

【英国ドラマ】アガサ・クリスティー原作『ABC殺人事件』マルコヴィッチ版ポワロでイギリスの闇を描く

アガサ・クリスティー ABC殺人事件

©アガサ・クリスティー・プロダクションズ2018

今回、クリスティー作品を新たにドラマ化するシリーズの第4弾として、代表作『名探偵ポワロ』に切り込むことになりました。
BBC制作『ABC殺人事件』のポワロに抜擢されたのは、アメリカ人俳優のジョン・マルコヴィッチ。
英国人俳優ではなく、アメリカ人であるマルコヴィッチがポワロを演じているのが意外な配役ですが、これが成功しています。

『危険な関係』(1988)『マルコヴィッチの穴』(1999)など、ジャンルを問わない映画に出演し、変質者から純真な男まで、まったく違うキャラクターを演じ分ける力量を持ち合わせた俳優ジョン・マルコヴィッチ。
カメレオン俳優、個性派俳優と称されるマルコヴィッチが、どのようなポワロ像を見せるのか気になる方も多いと思います。

マルコヴィッチ版ポワロは、外見からして原作に忠実ではありません。ポワロの過去や、ストーリーの内容自体についても、今回のドラマ用に創作された部分も多く見受けられます。

【英国ドラマ】アガサ・クリスティー原作『ABC殺人事件』マルコヴィッチ版ポワロでイギリスの闇を描く

アガサ・クリスティー ABC殺人事件

©アガサ・クリスティー・プロダクションズ2018

マルコヴィッチ版ポワロは、人々から忘れ去れ、ピークを過ぎてしまった探偵としての「哀愁」の部分が強調されて描かれています。また、原作ではコメディタッチで描かれているポワロが「外国人」であるという描写が、本作では非常にシリアスに描かれているのです。ベルギーからイギリスへと亡命してきた、「外国人」として扱われるポワロの抱える「闇」の部分に焦点を当てています。

原作に登場する自信過剰でチャーミングなポワロではありませんが、ジョン・マルコヴィッチという名優が作り上げた闇ポワロの独特の雰囲気に、冒頭から目が離せなくなるでしょう。

原作ファンの方のために言っておくと、外見や、ポワロの境遇は原作とは異なるものの、クリスティーの作り上げたポワロという人物の内面については、改変されていません。正義感に溢れ、殺人犯を心の底から憎むポワロという人物の芯の部分は残しつつ、新たなキャラクターを作り上げることに成功しています。

マルコヴィッチは、フランス在住経験もあり、フランス語に堪能であるというところも、ポワロの人物像に深みを与えています。

『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』全3話一挙放送

『ABC殺人事件』は、『名探偵ポワロ』シリーズの中でも、特に人気のある小説と言えます。
ポワロの元に届く犯行を予告する手紙。その手紙通り書かれている通りに、Aの付く駅がある町でAの付く名前の人物が殺されていくというアルファベット順殺人。

エンターティンメント性のあるストーリーと、意外な犯人というクリスティ―のお得意分野の物語の中に、戦争のためのPTSDや、連続殺人を犯すサイコパスの要素などに焦点をあて、現代社会にも通じる「闇」の部分を描いていくストーリーです。

サラ・フェルプス脚色の『ABC殺人事件』では、「過去の人物」としてバカにされるポワロが、一人犯人を追い詰めていく姿に、悲壮感すら感じてしまいます。

ポワロのことを「信用ならない人物」として見下すクローム警部を、映画『ハリー・ポッター』シリーズのロン・ウィーズリー役でおなじみのルパート・グリントが演じているのも注目です。

デビッド・スーシェのポワロファンも、そうでない方も、この機会に、新たなアガサ・クリスティ―の世界を覗いてみてはいかがでしょうか?

【英国ドラマ】アガサ・クリスティー原作『ABC殺人事件』マルコヴィッチ版ポワロでイギリスの闇を描く

アガサ・クリスティー ABC殺人事件

©アガサ・クリスティー・プロダクションズ2018

12月22日(日)の放送では、デビット・スーシェ版 「ABC殺人事件」と見比べることも可能

デビッド・スーシェ版「名探偵ポワロ ABC殺人事件」

12月22日(日)18:05pm ~放送

アガサ・クリスティー ABC殺人事件 | AXNミステリー

ジョン・マルコヴィッチ版『ABC殺人事件』

12月22日 (日) 20:00~

制作:2018年 イギリス/約60分×全3話/字幕版/原題:THE ABC MURDERS
原作:アガサ・クリスティー 脚本:サラ・フェルプス
出演:ジョン・マルコヴィッチ(エルキュール・ポワロ)、ルパート・グリント(クローム警部)、アンドリュー・バカン(フランクリン・クラーク)ほか

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