
2024年の9月~10月にかけて、アメリカ南部は「ヘレン」と「ミルトン」という2つのハリケーンの直撃を受け、各地で洪水や竜巻による被害が発生した。
テキサス州ダラスを本拠とする航空会社、サウスウエスト航空は、被災地のシェルターにいた動物たちを移送するため、同社の航空機を提供した。
145匹以上の犬や猫がこの飛行機で安全な場所まで運ばれることに。
そして当日の機長を務めたパイロットが、「乗客」の1匹だった小さな子猫に一目惚れ。正式に家族の一員として迎えることにしたそうだ。
被災地から保護動物たちを運んだフライト
2024年10月12日、動物たちを乗せてサウスカロライナ州のマートルビーチ空港を離陸した飛行機は、無事にウィスコンシン州ミルウォーキーのジェネラル・ミッチェル空港に到着した。
搭乗していたのは、フロリダ州とテネシー州の動物保護施設で保護されていた動物たち。
被害の大きかった南部から移送された彼らは、中西部の各地にある8カ所のシェルターに分散して受け入れられる予定だという。
彼らを移送したことで被災地のシェルターには余裕ができ、ハリケーンで飼い主と別れ別れになったり、ケガをしたりして保護されたペットたちを収容する余地が生まれたのだ。
このミッションは、Greater Good Charities[https://greatergood.org/]とLucky Dog Animal Rescue[https://www.luckydoganimalrescue.org/]の2つの動物保護団体、そしてサウスウエスト航空の協力によって実現した。
Lucky Dog Animal RescueのCEO、ミラ・ホロウィッツさんは、サウスウエスト航空への感謝の気持ちを表明している。
このフライトを可能にしてくれたサウスウエスト航空に、私たちは心から感謝しています。
おかげで避難を余儀なくされた途方もない数の動物たちが、それぞれの飼い主と再会するまでの間、シェルターでケアを受ける余裕ができたのです
これに対し、サウスウエスト航空のSVP兼CCO(最高コミュニケーション責任者)、ホイットニー・アイヒンガー氏はこう語る。
サウスウエスト航空は、必要とされるところに心からの支援を提供するため、率先して行動しています。
今回、この動物たちを終の棲家へ運ぶために航空機をお貸しできたことを、私たちは光栄に思います
機長が子猫に一目惚れ。我が家へ連れて帰ることに
さて、動物たちはスタッフやボランティアに付き添われ、機内で数時間を過ごすことに。長旅を共にする間、ペットとスタッフたちはすっかり仲良しに。
そしてこの飛行機を操縦していた機長のマシュー・プレビッシュさんも、「乗客」のひとり、子猫のエイヴリーに夢中になってしまったんだ。
私はエイヴリーが見せた世界に対する興奮とエネルギーに感銘を受けたんです
飛行機が目的地に到着したとき、マシューさんは既にエイヴリーのとりことなっていた。だが彼はこのミッションではあくまでパイロットを務めるだけで、動物を引き取ることになるとは思ってもいなかった。
そこで機内から奥さんに電話をかけて、エイヴリーを連れて帰ってもいいかどうか、お伺いを立てたんだそう。ところが奥さんの返事は意外なものだった。
妻は私がこのミッションを引き受けたとき、きっと何か動物を連れて帰って来るだろうな、とわかっていたんだそうです
奥さんからのGOサインが出たため、マシューさんは正式にエイヴリーを引き取りたいと申し出た。
この申し出を受けたスタッフにも、もちろん異論はなかった。早速機内で手続きが行われ、エイヴリーは晴れてマシューさんの飼い猫に。
フライトを終えたマシューさんは、無事エイヴリーをデンバーの自宅に連れて帰ったとのこと。
今回のミッションに尽力してきたミラさんも、この微笑ましい出来事を喜ばしく受け取ったようだ。
それは「高度3万フィート(9,144m)の愛」でした。機長がこの特別なフライトを飛ばすことに同意した時点では、まさか避難してきた動物を引き取ることになるとは思ってもいなかったでしょう。でもこれはきっと運命だったんです。
子猫のエイヴリーは間違いなくラッキーキャットです。着陸して駐機したときには、新しいお父さんと一緒に、コックピットで寛いでいたんですから。
Lucky Dog Animal Rescueは、このハッピーエンドを可能にする手助けができたこと、を非常に誇りに思っています
救助・支援活動に尽力する航空会社
サウスウエスト航空では、このフライトに先立ち、被災地へ約2.7tの支援物資を届けるミッションも行っていた。物資にはシャンプーや衛生用品、毛布や着替え、シーツなどが含まれていたという。
実はこの航空会社は、2012年に発生したハリケーン「サンディ」、そして2017年のハリケーン「ハービー」襲来時にも、今回と同様のミッションをこなしていたそうだ。
下の投稿はハービーの被害を受けたテキサス州オースティンから、カリフォルニア州のサンディエゴまで64匹の動物たちを運んだ時の様子。
また、同航空はマクドナルドが運営する、「ロナルド・マクドナルド・ハウス(難病の子供とその家族のための宿泊施設。日本ではドナルド・マクドナルド・ハウス)」への支援も行っている。
日頃から困っている人や動物に手を差し伸べて来た実績と風土があったからこそ、今回のミッションもスムーズに遂行できたのだろう。
マシューさんは今回の移送劇について、最後にこう語っている。
今回のミッションで、私たちが変化をもたらすことができたのは光栄ですし、嬉しく思っています。
この動物たちがみんな終の棲家を見つけ、多くの人たちを幸せにしてくれればいいなと願っています
References: Greater Good Charities Partners with Southwest Airlines and Lucky Dog Animal Rescue to Transport Humanitarian Supplies to North Carolina and Operate Emergency Airlift of 145 Shelter Pets | SWA Newsroom[https://www.swamedia.com/news-and-stories/news-release/greater-good-charities-partners-with-southwest-airlines-and-lucky-dog-animal-res-MCRBOCHB2PCFAA5NVAPDNIY53NK4] / Pilot of Rescue Flight for Pets Impacted by Hurricanes Adopts Kitten, Finding 'Love at 30,000 Feet'[https://www.goodnewsnetwork.org/pilot-of-rescue-flight-for-pets-impacted-by-hurricanes-adopts-kitten-finding-love-at-30000-feet/]