
ドイツで発掘された3600年前の「ネブラ・ディスク」は、金で太陽や月などの天体が描かれた人類最古と言われる青銅と金で作られた天文盤だ。
国際的に極めて重要な発見とされながらも、その詳しい製造法はよくわかっていなかった。
今回、ドイツ、デルタシグマ・アナリティクス社をはじめとする考古学者チームは、最先端のイメージング技術を駆使してネブラ・ディスクの金属組成を分析した。
その結果、このディスクは一度の鋳造で完成したわけでななく、少なくとも10回もの熱間鍛造を繰り返すことで仕上げられたことが明らかになった。
当時の金属加工職人たちの技術力の高さをうかがえる新発見だ。
青銅と金で作られた3600年前の天文盤
「ネブラ・ディスク」は、1999年にドイツのネブラ近郊で発掘された円盤状の天文盤だ。
直径約32cm、厚さ数mmの青銅の円盤で、星々や太陽・月といった天体を表した金の装飾が施されているところが特徴的だ。
こうしたことから、紀元前2300~前1600年頃の青銅器文化「ウーニェチツェ文化」の人々が天文盤として利用していたと考えられている。
3600年以上前に作られたネブラ・ディスクは「人類最古の天文盤」とされており、2013年にはユネスコの「世界の記憶」にも登録された国際的にも重要な遺物だ。
だが、その作りは見た目ほどシンプルではなく、どのように製造されたのか詳しいことはわかっていなかった。
10回もの複雑な鍛造を繰り返して仕上げられていた
今回デルタシグマ・アナリティクス社をはじめとする考古学者チームは、光学顕微鏡による金属組織分析のほか、エネルギー分散型X線分光法や電子後方散乱回折など、最先端のイメージング技術を駆使することで、謎に包まれたネブラ・ディスクの作成法に迫っている。
こうした調査から明らかになったのは、ネブラ・ディスクがかなり複雑な熱間鍛造プロセスを経て作られたということだ。
その元になる素材は、まず鋳造(溶かした金属を型に流し込んで固める方法)で作られる。そこからが大変で、さらに少なくとも10もの工程が繰り返される。
その都度700度まで加熱され、鍛造(金属を叩いて成形すること)や焼なまし(加工しやすいよう柔らかくする熱処理)が行われるのだから、大変な作業だ。
熟練の銅細工職人の手でレプリカを製作するという実験では、分析で判明したよりもさらに工程を繰り返す必要があったという。
これは、鋳造で作られた当時のオリジナルが実験のものより大きく、薄かったことが原因だと考えられている。
3600年前の職人の技術力の高さを証明
ネブラ・ディスクは発見されて20年以上が経つというのに、今もなお基礎的な新発見がなされている。
このことは、この世紀の大発見のユニークさを改めて示すとともに、初期青銅器時代における金属加工技術の高さを物語っているとのことだ。
この時代の職人たちは、金属の鋳造や熱間鍛造の技術に熟練しており、ネブラ・ディスクのような唯一無二の作品や、大量の斧なども製作していたそうだ。
この研究は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-024-80545-5]』(2024年11月21日付)に掲載された。
References: How did they make it? New insights into the production of the Nebra Sky Disc[https://phys.org/news/2024-11-insights-production-nebra-sky-disc.html]