
すこし透明感のある指の幅ほどしかない赤色のボディにはたくさんのトゲトゲ。2つの黒い目がきょとんとした表情に見えるカニが、ネット上で人気急上昇中だ。
このカニの赤ちゃんは、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者たちがメキシコ湾で深海サンゴのサンプルを採取している際、偶然発見したものだ。
そのキャラクターっぽい愛らしい姿が公開されると、瞬く間に注目を集めた。
深海で偶然発見されたカニの赤ちゃん
2024年8月、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者たちがメキシコ湾で、深海サンゴのサンプルを採取している際、予期せぬ同乗者を発見した。
それは 深海に生息するアガシイバラガニ(Neolithodes agassizii) の赤ちゃんで、偶然にも海底から回収したビニール袋に付着していたという。
そこで彼らが2025年1月8日、このカニの動画に「これは世界で一番かわいくて、とげとげしている小さなカニです!(誇張も入ってます)」とコメントをつけX(旧Twitter)に投稿したところ、1000万回以上も再生された。
アガシイバラガニって?
アガシイバラガニは、タラバガニ科に属する深海性のカニの一種で体にトゲの生えた硬い甲羅が特徴だ。
主に中央アメリカや南アメリカ周辺の太平洋および大西洋に生息し、水深約200~1,900mの深海で見られる。
深海の厳しい環境に適応しており、トゲトゲの甲羅は捕食者から身を守るために進化したものだ。
甲殻は洋梨形をしており、トゲが密集しているのが特徴だ。
このカニは幼少期は指の幅程度のサイズしかない、だが成長すると甲羅だけで最大約12cmに達する。
これは脚を含まないサイズで、脚を含めればさらに大きく見えるだろう。
カニであってカニでない?
アガシイバラガニは厳密にいえば本当のカニではない。ここでいう「本当のカニ」とは、5対10本の脚のうち、8本脚で歩行するカニ類(短尾類:Brachyura)を指す。
一方タラバガニやアガシイバラガニは、同じ10本脚でも、歩行に使う脚は6本だけで、残り2本の脚は、小さく縮んだ状態に退化して体の下に隠れている。そのため彼らは短尾類ではなく、ヤドカリなどに代表される異尾類(Anomura)に分類されている。
つまり一見するとカニのようでも、分類学的にはカニではなく、むしろヤドカリ系ということになる。
赤ちゃんはセンジュナマコに乗って移動するよ
深海は、日光が届かない特殊な環境だ。ここは非常に暗く、食物となる有機物が限られている。
そんな中で、アガシイバラガニの赤ちゃんが「海の豚」とも呼ばれるセンジュナマコ(Scotoplanes)属の体に乗っている姿が確認されている。
センジュナマコは海底をゆっくり移動しながら、動物の遺骸や デトリタス(detritus) と呼ばれる分解された有機物を食べる。
深海では隠れる場所が少ないため、アガシイバラガニの子は、ナマコの体を隠れ家にすることで捕食者から身を守っていると考えられている。
このような共生関係は、2016年のモントレーベイ水族館研究所(MBARI)の研究[https://www.mbari.org/news/young-king-crabs-found-hitchhiking-on-sea-pigs/]でも観察されており、調査された約2,600匹のセンジュナマコのうち、約25%がアガシイバラガニの幼体を「乗せていた」という。
ナマコに乗るアガシイバラガニの赤ちゃんの姿は、深海という過酷な環境に適応した進化の証だ。
その一方で、トゲトゲの見た目やユニークな生態が多くの人々の興味を引きつけている。新たなキャラクターとしての地位を確立していきそうだね。
深海のカニ食べたらおいしいのかどうかはちょっとよくわからないな。でも可食部の肉量が少ないのでダシぐらいにしかならないかな?
References: Adorable Baby Crab Stuns The World With Its Spiky Charm : ScienceAlert[https://www.sciencealert.com/adorable-baby-crab-stuns-the-world-with-its-spiky-charm]