京大生は見た、チンパンジーも”連れション”する。尿意が伝染するのは人間と一緒
Credit: Kumamoto Sanctuary

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 誰かが「トイレに行きたい」と言い出すと、つい自分も尿意を感じ、一緒にトイレに行った経験はないだろうか?実は、このような行動は人間だけのものではない。チンパンジーにも、同じ現象が見られることが明らかになったのだ。

 京都大学の研究によると、群れの中で1頭が排尿を始めると、他のチンパンジーも続けて排尿する傾向があるという。連れション(正確には連られション)である。

 この『伝染する排尿』は、社会的な絆やグループの調和を促進する役割がある可能性が指摘されている。

 この現象は、私たち人間とチンパンジーの共通祖先にまで遡る進化的なルーツを探る手がかりになるかもしれない。

連れションには進化的なルーツがある?

 誰かがトイレに席を立つと、自分も行きたくなる。これは人間ならごくありふれた日常の風景だ。

 そもそもなぜ連れション(正確には連られション)なんて奇妙なことが起きるのだろう?

 京都大学野生動物研究センターの博士課程の学生、大西絵奈氏らの解説[https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2025-01/web_2501_Onishi_Current_Biology-d9dec487ca8f6302e3a74f0323f8e1f6.pdf]によると、連れションは社会現象であるという。

 それは古今東西行われており、さまざまな芸術作品のテーマにもなってきた。

 また連れションは仲間意識や連帯感を感じさせるものでもある。

 それを示すように、イタリアには「仲間と一緒に小便しない者は、泥棒かスパイである(Chi non piscia in compagnia o è un ladro o è una spia)」なんてことわざまであるのだそう。

 その普遍性やそこから感じられる仲間意識を鑑みるなら、連れションという何気ない行為には、人間のような社会的動物にとって何か大切な意味があったとしてもおかしくはない。

 その行為が進化に根ざしたものである可能性だってあるのだ。

 たとえば、似たような現象はほかにもある。

 誰かがあくびをすると、ほかの人にそれが伝染することがあるだろう。連れションはこうした「半自発的な生理的行動」に似てはいないだろうか?

 だが社会的動物は人間だけではない。連れションが進化に根ざした行為なら、ほかの社会的動物にもあるかもしれない。

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チンパンジーも連れションをする

 そこで大西氏らは実際にそれを確かめてみることにした。

 京都大学熊本サンクチュアリで飼育されているチンパンジー20頭を600時間にわたって観察し、本当に連れション(研究チームは「排尿同期」と呼んでいる)しているかどうか確かめてみた。

 観察期間中、記録されたおしっこは1328回。これを詳しく分析してみると、確かにチンパンジーは完全にランダムに排尿しているわけではないことが明らかになったという。

 彼らのおしっこは仲間と同期して起きている。しかもそうした同期は近くにいるチンパンジー同士で起こりやすい。つまり連れションをしていると考えられるのだ。

 ちなみに群れの中で地位が低いチンパンジーほど、連れションに付き合う(仲間の排尿を見て自分も排尿する)ことが多いという。

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なぜ霊長類は連れションをするのか、その進化の意味とは?

 こうした結果は、チンパンジーのおしっこが社会的な影響を受けていることを示した初の証拠だ。

 だが、なぜ人間やチンパンジーなどの霊長類は連れションをするのか?

 これについて研究チームは、社会のまとまりを維持したり、集団行動をスムーズにするうえで重要な役割をはたしている可能性があると述べている。

 人間やチンパンジーだけでなく、霊長類以外の様々な動物の連れションを調べることで、集団行動や社会進化を解明する手がかりが得られると期待できるそうだ。

 この研究は『Current Biology[https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(24)01594-X?_returnURL=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S096098222401594X?showall=true]』(2025年1月20日付)に掲載された。

References: In chimpanzees, peeing is contagious | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1069719] / 京都大学プレスリリース[https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-01-21-1]

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