
これが地球上の生物なのか?しかも植物?そこには目を疑うような光景が広がっていた。どうみても、映画「エイリアン」の卵、エッグチェンバーの孵化を彷彿とさせるのだ。
南米アマゾン川流域に生息するオオオニバスは、直径2m以上になる巨大な浮水葉を水面に浮かべることで知られている。
やがて幻想的な美しい花を咲かせるのだが、その開花に至るまでの過程は、まるでSF映画のエイリアンやモンスターの襲来を目撃しているかのようだ。
水中から突き出した鋭いトゲに覆われた葉芽(ようが)は、周囲の植物たちを突き刺し、踏みつぶしながら水面を支配していく。
そんなオオオニバスの驚異的な成長過程をとらえた圧巻の映像を見ていこう。
水中に潜むエイリアンの卵?オオオニバスの葉芽が目覚めるとき
オオオニバスの成長は、まず水中での静かな準備から始まる。水底から突き出すのは、まるで生き物のようにうねる鋭いトゲに覆われた葉芽(ようが)だ。
これは単なる新しい葉ではなく、オオオニバスが水面を支配するための最初の武器とも言える。
この葉芽は徐々に水面へと押し上げられていく。なんかもうこのシーン、SF映画で見たことあるやつじゃないか!
葉芽の動きはまるでエイリアンの腕が地上へ伸びるような不気味な迫力を持ち、時に他の水草や小さな花を踏みつぶすこともある。
圧倒的な成長スピード!水面を覆う巨大な葉
葉芽が水面に到達すると、いよいよ 展葉(てんよう) の瞬間を迎える。1日に20cm以上も広がる葉は、わずか数日で直径2m以上に成長し、周囲の植物に光が届かないようにしてしまう。
その葉の裏側には無数のトゲが生え、動物や魚に食べられるのを防ぐ役割を果たしている。
また、オオオニバスの葉は縁が直角に立ち上がっており、これによって水面での安定性を確保している。
葉脈の構造はまるで橋の骨組みのように計算されており、大きな葉が破れずに水上で長く維持されるようになっている。
ついに開花!美しくも計算された受粉戦略
水面を支配したオオオニバスは、ついに花を咲かせる。夜になると直径30cmにも及ぶ白い花が開き、甘い香りを放ってコガネムシ科の甲虫たちを誘引する。
虫たちは花の中に閉じ込められ、一晩中花粉まみれになった後、翌日にはピンク色に変化した花から放たれる。こうして効率的に受粉が行われるのだ。
花が役目を終えると、オオオニバスは再び葉芽を伸ばし、新たな葉を展葉させていく。この圧倒的な成長スピードと巧妙な戦略により、オオオニバスは水面の覇者 としての地位を確立している。
オオオニバスはスイレン科オオオニバス属に分類される。属名の「Victoria」はイギリスのビクトリア女王にちなんでおり、種小名の「amazonica」はその生息地であるアマゾン川流域に由来している。
オオオニバスは比較的短命な多年生植物であるが、環境条件によっては一年生としての性質も示す。1シーズンに40~50枚の葉を展開し、各葉の寿命は約30日程度とされている。
オオオニバスの巨大な葉や美しい花だけを見ていると、その成長過程に隠された強引なまでの生存戦略に気が付くことはないかもしれない。
トゲに覆われた葉芽が周りの植物を犠牲にしながら浮上し、巨大な葉を展開し、光を独占する。
日本でもオオオニバスが見られる場所はいくつかある。中には葉の上に乗れる体験を行っている植物園もあるそうなので、実際に見に行くのもいいかもしれない。
この映像を見た後なら、オオオニバスの見方も変わってくるんじゃない?