家賃を支払う余裕がないため、職場のトイレに住む中国の女性

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 中国の湖南省で暮らす19歳の女性が、トイレで生活している日常的風景をSNSに投稿し、大きな注目を集めている。

 とはいえ、一時期日本で話題となった「トイレ飯」のようなものではない。

もっと切実な事情があったのだ。

 実家を離れ働きに出たものの、手頃な家賃の物件が見つからず、節約のために、工場の使用されていないトイレのスペースを無料で間借りしているのだ。

工場のトイレで生活する女性

 この女性は湖南省株洲市の家具卸売工場で働いている、ハンドルネーム「ライヤンヤン(懒洋洋)」さんだ。

 19歳といえば、普通ならおしゃれなお部屋で、好きなものに囲まれて楽しく独り暮らしを満喫していたいお年頃。

 だがライヤンヤンさんが住んでいるのは、実家でもアパートでもマンションでもでもない。職場の工場にある使っていないトイレなのだ。

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 仕事から帰って来ると、彼女は個室の前に布をかけ、トイレっぽさが目に入らないようにしてからベッドを作る。

 トイレだけに水場はあるので、洗顔や炊事、洗濯といった日常生活には困らないそうだ。トイレの便器は徹底して洗浄し、部屋が臭わないようにしている。

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部屋が見つからず節約のためにトイレ住まい

 工場の経営者は、当初彼女がちゃんとした住まいを探すのを手伝おうとした。だが工場がある工業団地は辺鄙な場所にあり、近くに彼女が一人暮らしで切るような住居はほとんどなかった。

 たまにあっても家賃が月に800~1,000元(約15,000~20,000円)と、彼女の予算を大幅にオーバーする物件ばかりだったのだ。

今は住むところがあればそれで十分なんです。家を借りるのに、大金を使いたくありません。

800元も家賃に使うなんて、絶対に考えられません

 ライヤンヤンさんはこう語る。彼女の月給は3,000元(約59,000円)以下で、お金はできるだけ節約したいと考えている。

 ライヤンヤンさんは貧しい家庭で生まれ育ち、女の子だという理由で家族からも冷遇されたようだ。そして家計を助けるために、16歳で高校を中退して働きに出たのだという。

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 経営者は最初、ライヤンヤンさんを工場の事務所に住まわせようとしたのだが、事務所の扉には鍵がなく、プライバシーの面で不安があった。そこで彼女は、ほとんど使われていないトイレに移ることを選んだという。

彼女は水道代と電気代として、月に50元(約900円)払うと申し出ましたが、私はお金を受け取りたくなかったので断りました

 経営者はこのように語っている。だがもうすぐ暑さが厳しくなると、狭いトイレで暮らすのはかなり厳しくなる。

現在は事務所の一室を無償で提供される

 そこで経営者は、最初に提供しようとした事務所のドアを、鍵がかかるように改造した。ライヤンヤンさんのトイレ暮らしは1か月ほどで終わりをつげ、快適な事務所への引っ越しが実現したそうだ。

 下は無事に事務所への引っ越しを果たしたライヤンヤンさん。

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彼女の健康を心配する声が殺到

 彼女の投稿を見た視聴者からは、彼女の健康状態を心配する声が多数寄せられていた。

  • トイレには大腸菌やカビや、さまざまな細菌が存在している。
    今は雨季で、空気中にどれだけの細菌が存在しているか想像もつかない。こうした環境で長期間生活することは、将来の健康を損なうことになると思う
    • でもこのトイレはほとんど使われていないって言ってたよ? 北京ではと寝室とトイレを一緒にする家主もいる。出稼ぎ労働者なんてこんなもん
      • 広東省には、トイレとベッドが一緒になった賃貸住宅が今もあるよ
  • トイレに住んでいたら病気になるよ。女の子なんだから気をつけて。まだ人生は長いんだから
  • 経営者さんが良い人で良かったよ
    • 本当に良い人なら、こんなことにはならないと思う
  • 彼女は困難に耐える強い子だね。経営者さんも優しいね
  • 働き始めたばかりの頃は、お金を貯めるのは正しいよ。何をするにも初期投資は必要だから。一生懸命努力すれば、きっと人生は良くなるよ
  • 甘粛省の田舎から出てきた同僚は、初任給の2,500元を受け取ったとき泣いていたな。こんな大金を見たことがなかったって
  • 一時期、郊外の廃墟に住んでいたことがある。大きな家だったけど、カビだらけだった。人生は楽じゃないけど、何でも経験だよ
  • 私が以前住んでいたところでは、毎日トコジラミに食われていた。でも私は生き延びたよ。
    何が問題なの?
  • いや、これは会社が責任を負うべきでしょ? 労働者の尊厳を守れない社会はゆがんでいる
  • 1990年代を思い出す。あの頃はみんな貧しくて、尊厳なんて存在しなかったよ

 中には再生数稼ぎのフェイクではないかという声もあったが、工場の経営者がこれを否定。ライヤンヤンさんは確かに、自分の工場のトイレに住んでいたと保証した。

 下の動画では、彼女の一日のルーティンが紹介されている。本当にトイレの中で暮らしていたのだ。

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 中国では一人暮らしをする若者が年々増えてきているが、大都市の会社員ならともかく、その生活は結構大変らしい。

 とは言え、さすがにトイレで暮らすのはどうかと思うんだ。いくら使っていなくてきれいでもトイレはトイレ。妙齢のお嬢さんが住む場所としては絶対に好ましくないよね。

 今回は短期間の仮住まいで済んだのでまだよかったけれど、事務所住まいも落ち着かない気がする。ライヤンヤンさんがゆったり安心して暮らせる住まいが早く見つかるといいのだが。

References: I live in a bathroom and pay $6 in rent — it’s where I cook, eat and sleep[https://nypost.com/2025/03/28/lifestyle/i-live-in-a-bathroom-and-pay-6-in-rent-its-where-i-cook-eat-and-sleep/] / 女子把公司厕所当“家” 月花30租下只为省钱[https://www.orientaldaily.com.my/news/buzz/2025/03/28/722301]

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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