数世紀前から存在していた、自分はガラスでできていると信じ込み、割れてしまうことを極端に恐れる精神障害「ガラス妄想」

 若者は部屋の窓を指さして、ラメイジンになにが見えるかを訊いた。ラメイジンは外の通りや車やビル、歩く人が見えると答えた。すると、若者は「先生は窓ガラスを見ていない。ガラスがそこにあるのに、先生は見なかった」と言った。そして、「あれはぼく。ぼくはあそこにいるのに、いない。まるで窓のガラスみたいなんだ」

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 会話は続き、若者はガラスでできているという感覚をさらに詳しく説明した。スイッチを入れたり切ったりするように、そこにいる、いないという感覚を心の中で自由に変えることができるのだという。消えたり、また現われたりできるらしい。

何故現代にガラス妄想が起きるのか?

 話を進めるうち、彼は最近事故にあっていたことが明らかになった。ラメイジンはなぜ現代の人間がガラス妄想の症状を示すのか、ひとつの仮説を考え出した。

 問題の若者は、ガラス妄想を通して、事故後の人間関係の距離の調整をしているという。事故の後、若者の家族は彼に対してやたら過保護になってしまったため、ガラス妄想は自分のプライバシーを取り戻し、やたらと干渉する家族から逃げるための手段だというのだ。

 中世期、特に17世紀には、精神疾患をもつ人にガラス妄想の症状があらわれる理由はたくさんあった。当時は、透明なガラスは珍しい素材だったため、まるで魔法か錬金術のような感覚で見られていたのだ。

 しかし、もうガラスが珍しいものではない現代に、なぜ、再びガラス妄想はあらわれたのか?ガラス妄想を呼び起こす、現代の引き金はなんなのだろうか?

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