うれしいニュース。州内で絶滅したと思われていたフクロモモンガダマシを発見!
再発見されたフクロモモンガダマシ Dan Harley – Healesville Sanctuary

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 フクロモモンガダマシはポッサムの仲間の有袋類で、オーストラリアのビクトリア州以外ではほぼ全滅したと思われていた。

 ところが、ニューサウスウェールズ州で、約140~200年ぶりにその姿がトレイルカメラに捉えられたのだ。

 ビクトリア州以外での生存が確認されたことで、研究者や関係者に大きな喜びが広がった。

 州の絶滅危惧種保護プログラムでは、今後さらに多くのトレイルカメラを設置して、フクロモモンガダマシの保全活動に取り組んでいくという。

トレイルカメラに写ったフサフサの尻尾

 2024年、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州で絶滅危惧種の調査をしていた研究者たちは、コスジオスコ国立公園周辺に複数のトレイルカメラを設置した。

 そして1年後の2025年、カメラを回収し膨大な数の画像を1枚1枚精査した結果、2024年10月2日未明に撮影されたものの中に、小さな生き物が写っているのを発見した。

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 10秒という短い時間に7枚撮影されていたのは、「フクロモモンガダマシ(学名:Gymnobelideus leadbeateri)」だ。

 英語では「フェアリーポッサム」と呼ばれ、「森の妖精」の愛称もある。確かに妖精のようにかわいい。

 「モモンガ」と名前はついているが、我々のイメージするモモンガやムササビの仲間ではなく、オーストラリアやニューギニア島、スラウェシ島などにいる有袋類ポッサムの仲間である。

 体長は15-17cm、尾長14.5-18cm、体重100-170gほど。尾は基部よりも先端のほうが太く、全身は灰色で、正中線に沿って黒い縦縞が入っている。

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 かつては広く分布していたが、最終的にはビクトリア州の高地でのみにしかいなくなった。IUCNレッドリストではCR(深刻な危機)に分類される絶滅危惧種だ。

 ニューサウスウェールズ州の気候変動・エネルギー・環境・水資源局(NSW DCCEEW)絶滅危惧種担当のフレッド・フォード博士は、この発見について次のように語っている。

画面にずらりと並んだ画像の中で、あの特徴的なフサフサの尻尾が揺れているのを見つけた時は、本当に驚きました。

まさに目に飛び込んできたという感じだったんです。この発見が示しているのは、こうした希少な生き物を見つけるには、実際に現地で観察することがいかに大切かということです。

発見したものを探していたわけではないかもしれませんが、リモートカメラや環境DNAのような最新技術を活用して観察することで、発見の可能性はより高まるのです

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 博士らは画像から、この生き物がフクロモモンガダマシだと確信していたが、念のためビクトリア州動物園とオーストラリア国立大学の専門家にも確認を依頼。

 その結果、確かにフクロモモンガダマシだとの確認が取れたのだ。

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ビクトリア州以外では絶滅したと思われていたが…

 現在フクロモモンガダマシは、ビクトリア州では約4,000匹が生息していると言われている。

 サウスウェールズ州では、140~200年前のものと考えられる骨が発見されていただけで、現存している証拠は長い間見つかっていなかった。

 それが今回カメラに収められたことで、コスジオスコ国立公園内とその周辺に、新たな個体群が確実に存在するであろうことが判明したのだ。

 ただし、ビクトリア州の個体群の生息地域と、今回撮影された地点の距離がかなり遠いことから、この2つのエリアにいる個体群は、遺伝的には異なっている可能性も捨てきれないという。

 ニューサウスウェールズ州のペニー・シャープ環境大臣は、この発見を「驚くべき」ものだし、次のように述べている。

何百万枚もの画像の中から、まるで干し草の山から針を見つけるような発見をした生態学者たちの努力は、自然保護への強い献身を物語っています。

そしてニューサウスウェールズ州政府の絶滅危惧種担当職員たちが、いかに素晴らしい仕事をしているかを示す証でもあります

 研究者たちは、これまで確認されていなかったフクロモモンガダマシの個体群が発見されたからといって、保護の必要性がなくなるわけではないと強調した。

 ビクトリア州では猫による捕食、伐採や山火事による生息地の喪失、気候変動、近親交配などが原因で、個体数が減少し続けている。

 彼らが生き延びるためには巣作りに適した古木や、移動の際に身を隠すための低木が必要であり、現在残されている自然環境を守ることが重要だ。

 だが専門家らは、フクロモモンガダマシのための保護区を設けるだけでは、彼らの種の保全には不十分だと指摘している。

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州を上げた既存種の保全活動への取り組み

 大臣はさらに、州政府の政策について以下のように続ける。

コジオスコ国立公園でのこの特別な発見は、なぜ政府が侵略的外来種を排除し、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州にまたがるオーストラリア唯一の本土高山地帯を守るために行動を起こしているのか、その理由を改めて浮き彫りにしているのです

 サウスウェールズ州では、在来種が絶滅の危機にある要因の一つが外来種の増加にあるとし、既存の生態系を守るため外来種を排除する政策を進めている。

 今回のフクロモモンガダマシが発見されたコジオスコ国立公園では、特に17,000頭にまで増えた野生馬の駆除に注力。

 2023~2024年にかけて5,000頭以上の野生馬を空中から射殺したほか、2027年までに3,000頭まで減らす計画だという。

 フクロモモンガダマシが「森の妖精」と呼ばれるのは、その見つけにくさから来ていると言われている。

 今回の発見は、保護地域における定期的な調査やモニタリング、種の存在確認の基本的な作業がいかに重要かを浮き彫りにした。

 今後、研究者たちはトレイルカメラの増設や過去の映像の再確認を行い、見逃していた個体を探す予定とのこと。

 さらに州政府も、フクロモモンガダマシを州内の絶滅危惧種に早急に指定する手続きを進めているそうだ。

References: Smithsonianmag[https://www.smithsonianmag.com/smart-news/a-tiny-endangered-creature-that-moves-like-greased-lightning-has-been-found-in-an-unexpected-place-180986749/] / Theguardian[https://www.theguardian.com/australia-news/2025/jun/01/this-elusive-possum-was-thought-to-be-extinct-outside-victoria-now-ecologists-have-made-an-amazing-discovery]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。

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