白亜紀のアヒル口の恐竜、モロッコで発見された新属新種「タレタ・タレタ」
新種の恐竜、タレタ・タレタ(Taleta taleta)の復元予想図 Image credit: Connor Ashbridge / <a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Taleta#/media/File:Taleta_taleta.png" target="_blank">WIKI commons</a>

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 アフリカ、モロッコの地層から、アヒルのようなくちばしをもつ新属新種の草食恐竜が発見され、「タレタ・タレタ(Taleta taleta)」と命名された。

 2025年に発表されたこの研究は、約6600万年前の白亜紀後期にヨーロッパからアフリカへ恐竜が渡り、現地で急速に進化していたことを示している。

 イギリス、バース大学などの国際研究チームが2つの顎(あご)の化石から導き出した重要な発見だ。

白亜紀後期、モロッコで発見された新属新種の草食恐竜

 バース大学の古生物学者ニコラス・ロングリッチ博士を中心とした国際研究チームは、アフリカ北西部、モロッコ中部に広がるウラド・アブドゥン盆地で発見された2つの顎の化石を詳しく調べ、新しい属と種にあたる恐竜を確認した。

 恐竜は「タレタ・タレタ(Taleta taleta)」と名づけられ、その成果は学術誌『Gondwana Research[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1342937X2500156X]』(2025年5月28日付)に発表された。

 タレタ・タレタは、くちばしのような口を持つ草食恐竜、鳥脚類のグループ、ハドロサウルス科[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9%E7%A7%91]に属する。

 その中の、頭にとさかのような飾りがある「ランベオサウルス亜科[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%99%E3%82%AA%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9%E4%BA%9C%E7%A7%91]」に属し、さらにヨーロッパやアフリカで見つかっている小型のグループ、アレニサウリニ(Arenysaurini)の仲間にあたる。

 つまり、ハドロサウルス科という大きなグループの中のランベオサウルス亜科から、新たに「タレタ」という属と「タレタ・タレタ」という種が見つかったということになる。

 これで、モロッコの同じ地層から見つかっているランベオサウルス亜科の恐竜は3種類目となった。

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白亜紀末期の環境と恐竜たちの進化

 タレタ・タレタの化石が見つかったウラド・アブドゥン盆地は、当時の浅い海にたまったリン酸塩を含む砂や泥灰岩、石灰岩でできている。

 この地層は白亜紀後期の約7200万年前から始新世初期の約5600万年前にかけて積み重なったもので、北大西洋の海が内陸深く入り込んでいた時代の記録でもある。

 この地域では、これまでに「アジュナビア・オデュッセウス(Ajnabia odysseus)」と「ミンカリア・バータ(Minqaria bata)」という、同じアレニサウリニの仲間が見つかっている。

 どちらもヨーロッパの恐竜と深い関わりがあり、当時、海に隔てられていたはずのアフリカにハドロサウルス類が渡ってきた証拠と考えられている。

 そして今回のタレタ・タレタの発見は、同じグループの中でさらに多様な恐竜がアフリカに広がり、それぞれが異なる環境に適応して進化していたことを示している。

 研究チームは、この現象を「分散によって始まった急速な進化「適応放散(てきおうほうさん)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A9%E5%BF%9C%E6%94%BE%E6%95%A3]」と呼んでいる。

 適応放散とは、1つの祖先の仲間から、その後の環境や生活の違いに応じて多様な特徴を持つ子孫が次々と進化していく現象のことだ。

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恐竜の進化は地域と環境によって異なっていた

 アフリカではこの時期、ハドロサウルス類の多様化が進んでいたのに対し、北アメリカでは逆にこの仲間の恐竜は少なくなっていた。

 このように地域によって恐竜の進化の道筋が大きく異なっていたことが、今回の研究からも改めてわかった。

 研究を主導したロングリッチ博士は「この発見は、恐竜の進化がどれほど地域ごとの環境に影響され、そして移動によって新たな多様性が生まれたのかを示す重要な証拠だ」と述べている。

References: Sciencedirect[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1342937X2500156X] / New Duckbilled Dinosaur Species Discovered: Taleta taleta[https://www.sci.news/paleontology/taleta-taleta-13954.html] / Duckbill dinosaur discovery in Morocco: Expert unpacks the mystery of how they got there[https://phys.org/news/2024-03-duckbill-dinosaur-discovery-morocco-expert.html]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。

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