
小さい子は好奇心旺盛だ。目につくものを追いかけたくなるのは人間に限ったことではない。
南アフリカのクルーガー国立公園で、赤ちゃんゾウがツバメの群れを一生懸命追いかける微笑ましい姿が撮影された。
まだ上手に鼻を使えない赤ちゃんゾウが、周囲を飛び回るツバメたちに触りたくて奮闘する。
ツバメたちも積極的に赤ちゃんゾウを追いかけている(からかってる?)ようにも見え、自然界の異種交流が垣間見られて、心を和ませてくれる。
ツバメに夢中に赤ちゃんゾウ
南アフリカのクルーガー国立公園の南西部に位置するキャンプ地「ベルク・エン・ダル」周辺の道路で、まだ幼いゾウの子がひとりで、何かを必死に追いかけていた。
丸みを帯びた額と体つきから、オスのアフリカゾウの赤ちゃんと見られる。
頭を高く掲げ、耳を広げ、尾を水平に伸ばし、夢中になって追いかけていたのは、地面近くを飛び交うツバメたちだ。
ツバメは天気が変わる前に、地面の近くを飛び回ることがある。餌となる虫たちは風が強くて飛びづらくなるため、風が弱い地面近くに集まるからだ。
それがちょうど赤ちゃんゾウの目に留まったのだ。
程よい高さで飛び回るツバメたちに興味津々なゾウは、まるで大量の猫じゃらしを目にした猫の如く、必死になって追いかける。
鼻が邪魔でうまく追いかけられない
赤ちゃんゾウはまだ自分の鼻を上手に使いこなすことができない。走り回るたびに鼻が揺れるため、うまく追いかけられなかったようだ。
ゾウの鼻は鼻と上唇が融合した器官で、約5万もの筋肉から構成される。
呼吸やにおいを嗅ぐだけでなく、水を吸い上げたり、食べ物をつかんだり、仲間とのコミュニケーションに使用したりと、とても大切な役割を果たしている。
泳ぐときにはシュノーケルのように使うこともある。成長したゾウの鼻は最大140kgに達し、一度に約12リットルの水を吸い上げることができる。
そのため、この複雑な器官を使いこなすには、数年を要するのだ。
ツバメとの遊びは終了、近くに待機していた家族と合流
しばらくツバメを追いかけ続けた赤ちゃんゾウだったが、結局一羽も捕まえることはできず、やがて草むらへと入っていった。
ひとりで行動しているように見えていたが、ゾウは家族を大切にする動物だ。 群れの仲間たちは、赤ちゃんゾウがいた道路脇の茂み近くで、赤ちゃんゾウが遊び終わるのをずっと待っていたのだ。
好奇心旺盛なゾウの赤ちゃんの遊びは、余分なエネルギーを発散するだけでなく、社交性、問題解決能力、群れの絆を育む重要な役割を持つ。
今回の赤ちゃんゾウの追いかけっこ遊びは、自然の中で生き抜く力を養うための大切な一歩なのだ。
クルーガー国立公園のアフリカゾウ
クルーガー国立公園に生息するのはアフリカサバンナゾウ(Loxodonta africana)という種類のゾウで、陸上で最も大きな動物とされている。
オスの体重は最大で6,000kg以上、肩までの高さは約3mに達することもある。大きな耳と長い鼻、湾曲した牙が特徴だ。
ゾウは群れで生活する社会性の高い動物だ。
母系社会で、群れのリーダーはたいてい年長の経験豊かなメスである。
大人のオスは群れに残らず、10歳から15歳くらいになると群れを離れ、単独で暮らすか、オス同士の小さなグループを作ることがある。オスは繁殖期にだけメスの群れに近づいてくる。
ゾウは一日中歩き回りながら食べ物を探し、草や木の葉、枝、果実などを食べる。一日に食べる量は100kg以上、水は100リットル以上飲むこともある。
広大で自然が豊かなクルーガー国立公園は、ゾウたちが十分な食べ物と水を求めて暮らすのにぴったりの環境である。
ゾウは群れの仲間同士で強い絆を持ち、協力し合って子どもを守り、困った仲間を助けることもある。赤ちゃんゾウのように遊びを通じて学ぶことで、生きていくための力を身につけ、群れの一員として成長していくのである。