
12月初旬、火星の赤道付近に広がるエリシウム平原では風が吹き荒れていた。
巻き上がる砂塵やカラカラ転がる石は、火星でおなじみの風景であるが、今回はちょっと珍しい観客がいた。
最近、火星に到着したばかりのNASAの探査機インサイトである。
インサイトは2つの内蔵センサーでその風の音に耳を傾けていた。地震計でソーラーパネルから響く振動をキャッチ――それは人間が聴けるギリギリの低音だった。
また気圧センサーは大気に伝わる振動を直接検出し、人間にとってはもう少し音らしい音を拾った。
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Sounds of Mars: NASA’s InSight Senses Martian Wind
【地球とはかなり違う。火星で轟く超低音の風の音】
金曜日、NASAは、こうして録音されたオリジナルの音と人間の耳に聞こえやすいように編集したものを公開。
以下はトラックリストだ。なお非常に低い音なのでヘッドフォンの使用が推奨されている。
1. 地震計によるオリジナルの録音(0:36~0:55)
2. 地震計の録音を2オクターブ上げたもの(0:55~1:10)
3. 100倍に圧縮された気圧センサーのデータ(1:10~1:39)
気圧センサーの開発に携わった米コーネル大学のドン・バンフィールド氏によれば、それは「私たちの周囲のどこにでもあるただの風の騒音」だ。
だが、これを聞いてこの世のものと思えなかったならば、それは火星の大気が地球上のものとはまるで異なっており、不思議な振る舞いをするからだ。