Arquus
軍用車両を製造するアルクス社はフランスの企業なのだが、じつはスウェーデンのボルボグループに属している。
そのアルクスの新型軍用車両が「スカラビー(Scarabee)」だ。
モーターとディーゼルエンジンの2つの動力を搭載し、高速性能・機動性・ステルス性能を高い次元で実現させた次世代の軍用車である。
軽量であるゆえに飛行機に乗せて、低い高度からならばパラシュート降下までできる機動性の高さが自慢で、現在フランス軍が採用している730式軽装甲機動車の後継機候補として開発された。
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Scarabee Arquus 4x4 wheeled reconnaissance armored vehicle TechnoDay France French defense industry
【ミサイルすらかわす圧倒的な加速力】
合成素材や新しい組み立て法を採用したおかげで、弾丸や爆発に対して高い防御力を誇るのだが、開発チームは特に高速走行性能を重視したという。
ゴテゴテと装甲を盛って車体が重たくなるのは避けたかったのだそうで、つまりは「当たらなければどうということはない!」ということらしい。
車高1.8メートル、幅4.5メートルの4人乗りで、乾燥重量は6.6トン。
300馬力のディーゼルエンジンと103馬力のモーターをぶん回すことでパワーウェイトレシオは1トン当たり60馬力になる。
この種の車両としては破格のハイパワーのおかげで、最高速度は時速120キロを超え、対戦車ミサイルすら回避できる圧倒的な加速性能を発揮する。
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Theatrum Belli / Twitter
【アクロバティックなカニ走り】
スカラビーとはフランス語でカブトムシのことなのだが、もしかしたら担当者はうっかりしちゃったのかもだ。
なにしろ、その特技は横向きにカニ走りをすることだというのだから。本当はカニにちなんだ名前のほうがぴったりだったんじゃないだろうか。
カニ走りをすれば、地雷のような路上の障害物をひらり軽やかにかわせるし、キュッと小回りの効いたターンが可能になる。
こんなことができるのも、4輪のタイヤすべてを制御して、前輪と後輪を別々の方向に回転させられるからだ――ええい、ボルボの新型はバケモノか!っていう。
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Theatrum Belli / Twitter
【優れた搭乗性と積載力】
ドアはスライド式なので、狭い場所でも難なく乗り降りすることができる。そのドアには取っ手のようなものは一切なく、開けるにはリモコンを使わねばならない。これなら接近した敵に開けられてしまうということもない。
ルーフには、レーダー、12.7mm重機関銃、対戦車弾を射出する30mm砲、中距離ミサイルランチャーなど、状況に応じて各種兵器を搭載できる。
オプションでトレーラーを取り付ければ、さらに4トンまでの装備を搭載することも可能だ。
【最先端のロボット制御】
エンジンコントロールやブレーキ系・操縦系などはボルボや関連サプライヤーが開発したもの。
燃費にもこだわりがあり、ボルボ・トラックが2016年に世界に先駆け完成させた完全電子制御トラックの知見が活かされ、さらにエネルギー効率の優れたタイヤが採用されている。
またスカラビーはロボット化という点でも最先端だ。開発ではリモートコントロール性能が重視され、車体が見えなくなるほど遠い場所からでも操縦することができる。
将来的にはドローンと併せて運用することで、不意に障害物が現れたような場合でも対処できるようになる予定だそうだ。
References:New Military Transport Does the Unthinkable—It Can Drive Sideways/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:圧倒的加速力と横移動のカニ走りで地雷をかわすことが可能となったボルボの新型軍用車 http://karapaia.com/archives/52275822.html