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ソーラーパネルと植物は、なんとなく競合関係にあるような気がする。植物が日光を求めて背を高く伸ばすことからもわかるとおり、高いところにあるものが陽の光を独占してしまうからだ。
発電のためにソーラーパネルを設置してしまえば、その下にある植物には日光が届かなくなってしまう。
だが現実にはゼロサムゲームではない。植物の中には直射日光が苦手な種もある。乾燥地帯なら、土壌の温度上昇や水分の蒸発を防ぐことがてきる。
アメリカ・アリゾナ大学の研究チームによれば、ソーラーパネルと日陰に適した作物が土地を分かち合うことでウィンウィンの関係を築くことができるという。
【ソーラーパネルが作り出す日陰の効用】
グレッグ・バロン・ガフォード氏らは、アメリカ南西部に広がっているような、水に乏しく、なんでもすぐに乾いてしまう乾燥地帯に注目した。
こうした土地にソーラーパネルを作れば、たっぷり発電できるだけなく、その日陰によって、土壌の温度上昇や水分の蒸発を防ぐことができるじゃん? と閃いたのだ。
また植物が生えている土壌はむき出しの大地に比べて温度が下がるために、パネル自体の温度を下げることにもつながる。
パネルの温度上昇は発電の効率を低下させる。つまり、植物を植えて温度を抑えれば、それだけたくさんの電気を作れるようになるという寸法だ。
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【作物を植えると、発電効率が向上】
ガフォード氏らは、夏の間、実際にこれを実験してみた。ソーラーパネルのみが設置された区画、作物のみが植えられた区画、両方がある区画の3つでどのような違いが生じるのか観察してみたのだ。
実験では、ソーラーパネルを一般的な設置位置よりも少々高い地上から3メートルの高さに設置し、作物はチェリートマト(ミニトマトの一種)、ハラペーニョ(緑色のトウガラシ)、テピンペッパー(とても辛いトウガラシ)の3種が使われた。そのうえで、3つの区画を同じように灌漑し、温度、湿度、土壌の水分を記録した。
この結果は、当初の狙いどおりだった。パネルと作物を組み合わせた区画では、日中の平均気温が1度涼しく、反対に夜間は0.5度暖かかった。
肝心のソーラーパネルの温度は、作物のおかげで昼なら9度も低かった。さらにパネルは土壌の乾燥を防いでくれた。
温度と発電効率の関係から考えると、9度の低下は夏なら3パーセント、一年を通してなら1パーセント発電量が多くなるという。
作物の成長具合にはかなりの違いが見られた。
テピンペッパーは日陰に適応しているので、この植物にとってソーラーパネルが作り出す日陰はかなり都合が良かった。
二酸化炭素の吸収量で成長を測定してみたところ、33パーセントも成長が早まった。水の利用効率に変化はなかったので、それだけ土に含まれる水をたくさん使って成長したようだ。
そして最終的な収穫量は、ソーラーパネルがある区画では3倍にも増えた。
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とても辛いトウガラシの一種、でピンペッパー Image by ISD90/iStock
一方、ハラペーニョはパネルがあるところだと二酸化炭素の吸収量が11パーセント減少しており、日陰のせいでかえって成長が遅くなってしまうことがわかった。
それでも水の使用効率は大幅に向上しており、使用量は65パーセントも減少。トータルで見れば、わずかに収穫量が減少したが、それでも誤差の範囲内に収まった。
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チェリートマトは二酸化炭素吸収量と水の使用効率がどちらも65パーセント上昇。同じ量の水やりで2倍を収穫することができた。
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【シナジー効果で効率的な発電と農業を】
たしかに通常の農業機器にくわえてソーラーパネルを設置するのは費用の面で大変だし、しかもそれを普通より高い場所に設置するのだから余計にコストがかかる。
それでも、収穫量アップ、水の節約効果、パネルのリースによる収益、日陰による農家にとっての作業環境の改善など、地域によってはそれに見合うだけのメリットが得られるようだ。
それぞれの違いや個性を活かしてシナジー効果を生み出すなんて、とても素敵な発電と農業だと思うんだ。
この研究は『Nature Sustainability』(9月2日付)に掲載された。
References:Crops under solar panels can be a win-win | Ars Technica/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:太陽光発電のソーラーパネルに予想外の効果が!パネルの下に日光が苦手な農作物の畑を作るとウィンウィンの関係に(米研究) http://karapaia.com/archives/52282305.html
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