目に見えないインクを使ったタトゥで予防接種を受けた子供を識別(米研究)

Mikhail Spaskov/iStock
 途上国で予防接種プログラムに携わる人たちにとって、誰が、いつ、どのワクチンを接種したのか把握するのは厄介な仕事だ。

 しかしMITの科学者が開発した目に見えない不思議なインクによって、その問題が解決できるかもしれない。
そのインクで肌につけられた予防接種済みのタトゥは、普段は見えないが、スマホのカメラを通せばはっきりと確認することができるのだ。
【記録が紛失する心配のない情報管理】

 この目に見えないインクのタトゥを使うことで、書類などで予防接種の記録を間接的に管理するのではなく、本人に直接書くことができる。

 「紙のワクチンカードがすぐに失くなってしまったり、そもそもそんなものがないような地域、あるいは電子記録なんて聞いたこともないといった地域であっても、子供全員がきちんと予防接種を受けられるよう、記録を迅速かつ匿名で検出できる技術です」と研究グループのケビン・マックヒュー氏は述べている。

【ビル・ゲイツが開発を要請した安全で耐久性のあるインク】

 この研究開発は、ポリオや麻疹の撲滅に取り組んでいるビル・ゲイツ氏から直々に要請されたものだそうで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から助成を受けている。

 開発にあたって難しかったのは、人体に安全で耐久性のあるインクを開発することだったという。人体に無害な染料があっても、日光にさらされているうちに色あせて見えなくなってしまう。


 また子供のプライバシーにも配慮する必要があった。大切な個人情報である予防接種の記録を肌に直接書き込もうというのだから、簡単に他人から覗かれてしまうようなものではダメだ。

 そこで採用されたのが、もともとは細胞をラベリングするために開発された「量子ドット」という技術だ。これは裸眼では見えないが、赤外線を照射すると光る小さな半導体クリスタルでできている。

 量子ドットを特定のパターンで肌に埋め込んだら、スマホのアプリで赤外線を照射しつつ、その反射を検知してやる。こうすることで、その子が受けた予防接種の種類や時期を把握することができる。


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McHugh et al., Science Translational Medicine, 2019
【マイクロニードルで注射針の恐怖から子供を開放】

 量子ドットは、ポリマーと糖類から作られた分解性のマイクロニードルを使って、ワクチンと一緒に接種される。
 
 マイクロニードルはバンドエイドのようなパッチに仕込まれており、ぺたっと肌に貼り付けるだけでいい。

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McHugh et al., Science Translational Medicine, 2019
 子供は針を刺される恐怖に怯える必要がないし、注射のように特別な技術がなくても誰でも使用できるところもポイントだ。

 現時点では概念実証の段階でしかないが、ラットを使った実験では、接種から9ヶ月後もきちんと検出できた。また人間の皮膚モデルでも、太陽5年分に相当する照射に耐えたとのことだ。

 この研究は『Science Translational Medicine』(12月18日付)に掲載された。


References:scientificamerican / futurism.など/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:目に見えないインクを使ったタトゥで予防接種を受けた子供を識別(米研究) http://karapaia.com/archives/52285929.html