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人類の歴史は音楽の歴史でもある。様々な音楽が誕生するその過程のなかで、聞くに耐えないひどい音楽もあっただろう。
もしかしたらそれは、演奏者の力量のなさも、その原因のひとつだったかもしれない。
中世のヨーロッパでは、音楽家の下手な演奏は「罪」とみなされた。罪には罰を与えなければならない。そこで誕生したのが拷問道具「汚名の笛」である。
この笛は、実際に音楽を奏でる楽器ではなく、芸術を冒涜する罪を罰する道具なのだ。
【首枷のついた重たい拷問器具で公開処刑】
汚名の笛は、重たい鉄で作られた縦笛のような形をした器具で、吹き口はついていない。
代わりに下手な演奏をした音楽家の首にはめる輪がついており、首枷となる。
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音楽家が汚名の笛を持つその姿は一見、あたかもただ笛を吹いているように見えるが、キーに乗せる指は動かないよう締めつけられ、自分で外すことはできない。
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Joe Routon/Facebook
【街中を歩かされて公開処刑、下手な演奏は罪】
この格好で町を練り歩かされ、人々に腐った食べ物や野菜を投げつけられて、屈辱を受ける。中世のヨーロッパにおいて、きちんと練習をせず、下手な演奏を垂れ流すことはそれ自体が罪で、それ相応の罰を受けなければならないのだ。
この光景を目撃した当時の音楽家志望の子供たちにとっては、練習をおろそかにしてはいけないという教訓にはなったかもしれない。
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You Won’t Want To Play This Medieval Shame Flute
この「汚名の笛」は、ローテンブルグの中世犯罪博物館や、アムステルダムの拷問博物館で実物を見ることができる。
恥をかかせる拷問なので、肉体的な苦しみはそれほど苛烈ではない。やはり音が関係する拷問道具、古代ギリシャの「ファラリスの雄牛」よりは、遥かにましかもしれない。
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【フィンランドにはこの拷問器具をバンド名にしたロックバンドがある】
「汚名の笛」はあまり知られていない遺物だが、最近は、文化的トレンドにもその名が使われるようになっている。
ずばり「Flute of Shame」という名のフィンランドのロックグループがいる。
グループのメンバーはインタビューでこう語る。
アムステルダムで夜に出かけたとき、バナナバー(アムスの飾り窓地区の有名スポット)を探していて、いつのまにか拷問博物館に来てしまった。そこでこれを見つけたんだ
彼らは、拷問道具「鉄の処女」の名をもつヘヴィメタル・バンド、アイアン・メイデンとよく比較されるが、コンテストに出たら、どちらが勝つと思うと訊かれて、Flute of Shameのメンバーは、「アイアン・メイデンだろうけど、彼らは幸せなのかな?」と言っている。
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Flute of Shame - House of the Rising Sun
References:The Flute of Shame: Discover the Instrument/Device Used to Publicly Humiliate Bad Musicians During the Medieval Period | Open Culture/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:中世には演奏の下手な音楽家に拷問を与えるための楽器が存在した。公衆の前で恥をかかされる「汚名の笛」 http://karapaia.com/archives/52287452.html