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プラスチック汚染は現代社会を象徴するかのような問題で、それゆえに今すぐに解決されることはないように思える。
しかし、ほとんどの人はあまり好きではないだろう生き物が、我々人類の救世主になってくれるかもしれない。
その生き物とは、プラスチックをガツガツとむさぼるワーム(幼虫)のことだ。
ハチノスツヅリガの幼虫、ワックスワームは、レジ袋などのプラスチックの一種であるポリエチレンをムシャムシャと食べてくれるのだという。
【プラスチックを食べる生物】
じつはここ数年、プラスチックを食べて生きられる生物がいくつも発見されている。
たとえば、ペットボトルのリサイクル工場で発見されたPETを分解できるバクテリアや、人工的に酵素を改変して発泡スチロールを消化できるようになったミールワームなどだ。
今回のワックスワームもまたそうした例の1つ。ワックスワームはハチノスツヅリガの幼虫で、ミツバチの巣に寄生して被害を与えることから、養蜂家や蜂からは特に嫌われている。
だがこの虫はプラスチックが大好きで、ムシャムシャとかじり付いては、「エチレン・グリコール」というアルコールに分解してしまうことから、世界のプラスチック汚染問題の解決に利用できるのでは? と期待されている存在でもある。
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【プラスチック分解能力の秘密は腸内細菌】
カナダ、ブランドン大学の研究グループが今回突き止めたのは、この驚異的な能力の秘密はワックスワームの体の中に潜む腸内細菌にあったということだ。
ワックスワームから取り出されたその腸内細菌は、ポリエチレン(PE)だけで繁殖し、1年以上生きていられることが確認されたのである。
もちろん、その宿主であるワックスワームもまたポリエチレンだけを食べてきちんと生きられる。
ポリエチレンは、容器、買い物袋、包装用フィルムなど、さまざまなものに使われているプラスチックの一種だ。ワックスワームはこれに対して旺盛な食欲を示し、60匹で1週間もしないうちに30cm2以上のビニール袋を食い尽くしたという。
また、プラスチックだけを与えられたワックスワームでは、普通のエサを食べていた個体に比べて、腸内細菌が増えることまで判明した。
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【ワックスワームと腸内細菌の協力体制が重要】
面白いことに、腸内細菌を体内から取り出してしまうと、プラスチックの分解速度が大幅に低下するのだという。
同様に、抗生物質で腸内細菌を殺してしまうと、ワックスワームはそれまでのようにプラスチックを食べられなくなる。
つまり、その分解能力は両者が協力したときに最大に発揮されるようなのだ。腸内細菌とワックスワームとの間に何らかのシナジー効果があり、プラスチックの分解能力が強化されているということだ。
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【プラスチック汚染問題の解決策としての応用に期待】
研究グループの1人によると、プラスチック汚染は規模が大きすぎて、単純にワックスワームだけを投入して解決することは難しいという。
しかし、その体内でプラスチックがアルコールに分解されるメカニズムや、腸内細菌が繁殖しやすい条件を理解すれば、それらを応用して、より良い解決策を考案できるかもしれないとのことだ。
この研究は『Proceedings of the Royal Society B』(3月4日付)に掲載された。
References:brandonu/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:プラスチックゴミ問題の救世主となるか?プラスチックだけを食べて生き延びられるワックスワーム(カナダ研究) http://karapaia.com/archives/52288641.html
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