野生生物の世界は厳しい。捕食者から身を守るため、野生動物の赤ちゃんは生まれた直後に自力で立ち上がる力を身に付けなければならないだけでなく、群れにいる母親の存在を直ちに認識しなければならない。
しかし、その瞬間にも敵は容赦なく襲いかかることもあり得る。アフリカのケニアで、生まれたばかりのシマウマの赤ちゃんがひとりぼっちになってしまった。母親が、ライオンの群れに襲われて死んだのだ。
保護団体スタッフに保護されたシマウマの赤ちゃんは、現在スタッフらによる24時間体制のケアを受けているが、スタッフたちは縞模様の服を着て赤ちゃんに接している。それには重要な理由があるようだ。
【母親を亡くしたシマウマの赤ちゃんが保護される】
ケニアのシールドリック野生生物保護団体(Sheldrick Wildlife Trust)は、3月12日にFacebookでシマウマとスタッフの映像と写真をシェアした。
そこには、シマウマのような縞模様の服を着てシマウマの赤ちゃんを世話している保護団体スタッフがいる。
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お揃いのシマシマで一見可愛いと思ってしまうこの背景には、実は悲しい出来事があった。
“ディリア(Diria)”と名付けられたこのオスのシマウマの赤ちゃんは、わずか生後数日のところを保護されたという。母親がライオンの群れに襲われ、命を落としたのだ。
ディリアは、遊牧民が山羊の群れを連れて通りかかったことで救助され、保護団体のもとへ連れて来られた。
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【お揃いの縞模様の服を着て代理母として接する保護団体スタッフ】
現在、保護施設にてディリアの世話をしている保護団体のスタッフたち。
野生動物は誕生後すぐに捕食者から身を守らねばならず、群れの中にいる母親を瞬時に認識することが必要とされるという。
赤ちゃんシマウマは、生き残っていくためにも誕生後すぐに群れの中でどれが自分の母親か認識しなければなりません。そのため、母親は赤ちゃんと一緒に一旦群れから外れ、赤ちゃんに自分の被毛やにおい、自分の声を覚えさせます。
刷り込みを行うことができ、赤ちゃんが本質的に母親を認識すれば、また群れへと戻ります。(スタッフ)
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普段、野生では赤ちゃんは母親により育てられるが、シマウマは特に母子の絆がとても強いのだそうだ。
孤児となってしまったディリアにも、これからも強く生きていける力を身に付けなければならないが、職員1人が24時間つきっきりで母親代わりになることはできない。
そこで、スタッフらは縞模様の服を作り、交代で着ることにした。
そうすることで、複数のスタッフが24時間体制で世話ができるだけでなく、代理母としてディリアに刷り込みをすることができる。それらは何よりディリアの生存の可能性を最大限に高めることになるというわけだ。
【「野生生物の保護の成功をシェアすることが喜び」】
シールドリック野生生物保護団体は、40年以上にわたりケニアの野生生物の保護と保全に取り組んでおり、東アフリカでは最も古く先駆的な非営利団体だ。彼らのような保護団体は、世界がパンデミック状態になっても、休むことなく野生生物の保護に尽力しなければならない。
Facebookでディリアが注目を浴びたことで、スタッフはこのように呼びかけを行っている。
現在の状況では、特に難しいことは十分承知していますが、私たちの保護活動は全て寄付により賄われています。多くの支援のおかげで、ディリアのような赤ちゃんも救助し世話していけるのです。
このような時期だからこそ、活動継続にはみなさんからのより一層の支援が必要です。もし、寄付ができなくても、SNSで私たちの活動をフォローしてくれるだけでもありがたいです。私たちの目的の1つは、野生生物の保護が成功していることを皆さんにシェアし続けることでもありますから。
Facebookには、多くのユーザーから「シマウマの赤ちゃんを助けて世話してくれてありがとう!」「素晴らしい活動を続けているスタッフたちを尊敬します」「悲しいけどそれが自然なんだよね。
このシマウマが元気に育ちますように」といったメッセージが寄せられている。
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written by Scarlet / edited by parumo
記事全文はこちら:お母さんみたいでしょ?孤児になったシマウマの赤ちゃんの為、ゼブラ柄の服を着てお世話する飼育員(ケニア) http://karapaia.com/archives/52289490.html