
悪の親玉を倒したり、テロ組織を壊滅したりと、バイオレンスアクションはテレビゲームの一大ジャンルだろう。
ある研究によると、暴力的な表現をウリとする過激なゲームは、人の自己イメージを左右し、戦う覚悟を決めさせるのだそうだ。
『Computers in Human Behavior』(3月号104巻)に掲載された研究は、暴力的なゲームが怒りを認識しにくくし、自分が強いという感覚を助長することを示唆している。
【なぜ人はバイオレンスなゲームにハマるのか?】
ゲーム、特にオンラインゲームは時に少々病的なライフスタイルを作り出してしまうことがある。
いわゆるゲーム依存症というものになると、生活のどんなことよりもゲームが最優先されてしまう。そうした人は人間関係、学業、仕事、メンタルヘルスに悪影響が出ても、なかなかゲームを止めることができない。
ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)の心理学者トーマス・F・デンソン教授は、なぜ人はそこまでゲームにハマるのか知りたいと思った。
彼の仮説は、「暴力的なゲームをプレイすると、強くなったと感じられるからではないか?」というものだ。
[画像を見る]
Felix Lichtenfeld from Pixabay
【暴力的ゲームと非暴力的ゲームを比較した実験】
仮説を検証するために、3つの実験(868人が参加)が行われた。いずれの実験でも、被験者は暴力的なゲームか非暴力的なゲームどちらかをプレイし、それからその人の社会的認知力と脅威認知力を評価するテストを受けた。
最初の2つの実験では、Xbox 360 Kinectで15分ゲームをプレイ。3つめの実験ではブラウザゲームを5分プレイしてもらった。
【暴力的なゲームは自分が強くなったという錯覚を与える】
その結果、最初の2つの実験では、暴力的ゲームをプレイしたグループは、非暴力的ゲーム・グループに比べて、怒った表情を認識する能力が低く、ゲーム内の戦闘を止めるのを渋ったという。
また暴力的ゲーム・グループは、自分の戦闘能力を高く評価する傾向にもあったそうだ。
こうした結果は、「戦闘能力が向上したという主観的感覚は、暴力的ゲームから得られる報酬であるらしく、それがプレイヤーを引きつける要因になっている」ことを示していると、デンソン教授は説明する。
[画像を見る]
Prostock-Studio/iStock
【強くなった自己イメージとゲーム依存の関連性は?】
だが、こうした強くなったという錯覚があまりにも行きすぎてゲームに依存するのかどうかは今のところ分からないという。その可能性はあるが、はっきりと結論を出すには、もっとデータが必要であるそうだ。
また3つの実験すべてで一貫した結果が得られたわけでもない。3つめの実験では、暴力的ゲームをプレイしたからといって、必ずしも戦闘能力が高いと錯覚するようなことはなかったのだ。これについて、デンソン教授はプレイ時間が5分と短かったことが原因かもしれないと述べている。
【バイオレンスなゲームはプレイヤーにある種の自信を抱かせる】
なお、同教授による過去の研究では、暴力的ゲームを多くプレイする人は、自分のことを異性にモテると評価する傾向にあり、また性行為への関心も強いことが明らかになっているそうだ。
そうした結果も合わせて考えると、どうやら暴力的ゲームには、自分の魅力や強さに自信を抱かせる効果があるようだ。自分が強い存在であると思わせてくれる——それが人をゲームプレイに駆り立てる秘密なのかもしれない。
References:Study finds playing a violent video game makes people view themselves as a better fighter/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:バイオレンスなテレビゲームをプレイする人は、戦う覚悟を与え「優れた戦士」という自己イメージを形成させる(オーストラリア研究) http://karapaia.com/archives/52289640.html