
image by:public domain/wikimedia
1912年に沈没したタイタニック号が海底3,650メートルで発見されたのは1985年のことだ。以降多くの人々が沈没地点まで何度も潜ってきた。
タイタニックの引上げ作業権をもつ民間会社「RMSタイタニック社」は、船の象徴ともいえるマルコーニ無線機を回収する計画をたてている。これは、沈みゆく大型客船の遭難信号を発信し、700人あまりの人々を救命ボートで助けるのに活躍した貴重な機械だ。
だが、この計画が議論を呼ぶことになった。1500人もの人が亡くなった現場は、そのまま静かにしておこうという意見も多く、遺体が眠っているかもしれない現場をいじくりまわすことが亡くなった人たちへの冒涜になるという議論だ。
世界でもっとも有名な難破船の中に、一世紀も前に亡くなった乗客や乗組員の遺体がまだ残されている可能性があるだろうか?
【無線機回収計画に反対する声】
1985年9月1日、海洋地質学者ロバート・バラード率いるウッズホール海洋研究所およびフランス海洋探査協会の調査団は、海底3,650メートルに沈没したタイタニックを発見、2004年6月にはアメリカ海洋大気庁(NOAA)と共にタイタニックの損傷状態を調査する目的で探査プロジェクトを行った。
その後、バラードの呼びかけにより「タイタニック国際保護条約」がまとまり、同年6月18日、アメリカ合衆国が条約に署名した。この条約はタイタニックを保存対象に指定し、遺物の劣化と違法な遺品回収行為を防ぐこととしている。