空が作るダイヤモンド。大気中の二酸化炭素と雨水を利用してダイヤモンドを製造する技術を開発(イギリス)

空気と水で作るダイヤモンド / Pixabay
  大気中の二酸化炭素と雨水からダイヤモンドがザクザク。これなら二酸化炭素の削減もできるので、地球に嬉しい温暖化対策付きだ。


 イギリスの実業家が、そんな夢のようなダイヤモンドを作り出すことに成功したという。英「ガーディアン紙」などが伝えている。
【空が作るダイヤモンド】

 空から産出されるダイヤ「スカイ・ダイヤモンド」を考案したのは、環境に優しいエネルギー企業「Ecotoricity(エコトリシティ)」の創業者デール・ビンス氏だ。

 産出に必要なものは、「二酸化炭素」と「水」と「電気」の3つだけ。空気に含まれている二酸化炭素と雨水を集め、それを風力と太陽光発電による電力で処理することで人工的に作られる。

 こうして作られるダイヤモンドは、空気から温暖化の原因となる二酸化炭素を取り除くことができ、生成プロセスで二酸化炭素が排出されることもないので、まったく環境負荷がない「世界初のゼロインパクト・ダイヤモンド」と謳われている。


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【天然ダイヤができるまでの数十億年のプロセスを人工的に】

 スカイ・ダイヤは具体的には「化学蒸着」という方法で作られる。

 これは”ダイヤモンドの種”を密閉した容器に入れ、ここを炭素原子を持つメタンガスで充満させながら800度で熱する。すると炭素元素が徐々に”種”と結合して、ダイヤモンドができあがる。

 原料となる二酸化炭素は空気から抽出され、メタンガスを作るために必要な水素は、雨水を電気分解することで得られる。また、作業に必要なエネルギーは風力と太陽光発電なので、環境への影響は完全にゼロである。

 しかも生成されたスカイ・ダイヤは、地面の中で数十億年かけて形成される天然ダイヤと化学的にまったく同じ。
この点について国際宝石学会(IGI)に認定されているという。

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【環境にやさしいダイヤモンド】

 ビンス氏は、世界初の完全ベジタリアンのサッカークラブ「Forest Green Rovers(フォレスト・グリーン・ローバーズ)」のオーナーであるなど、環境問題に大きな関心を持っており、「不可逆的なダメージ」を与える従来のダイヤ採掘産業に挑戦したいと語る。

 従来のダイヤモンド採掘は環境に甚大な影響を与えることが知られている。従来の採掘法では、1カラットを産出するために1000トンの土砂が掘られ、さらに水3890リットルが消費され、二酸化炭素も108キロ以上排出されるのだ。

 くわえて、ダイヤモンドが産地で紛争の火種になることがあるなど、社会・経済的な影響も大きい。

私たちが呼吸する空気からのダイヤモンドづくりは魔法のような刺激的なアイデアで、いわば現代の錬金術です。
ダイヤを手に入れるために地面を掘る必要はありません。空を掘ればいいのです

 とビンス氏は語る。

 ビンス氏によると、イギリスにある現在の施設では毎月200カラットのスカイ・ダイヤを生産できるそうだが、来年にはさらに1000カラットにまで増産することも可能だという。

 さて、空から掘られたダイヤモンドの気になるお値段だが、まだ決まっていないとのこと。空から作られたダイヤだなんてとてもロマンチックな響きがある。値段次第では、案外、天然ダイヤよりも人気が出るかもしれない。


References:theguardian/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:空が作るダイヤモンド。大気中の二酸化炭素と雨水を利用してダイヤモンドを製造する技術を開発(イギリス) http://karapaia.com/archives/52296167.html