
ホラー体験の面白さはどこにあるのか? /iStock
ホラー映画やホラーゲーム、あるいはお化け屋敷などが大好きという人はいるだろうか?
不気味な描写でゾッとさせられたり、モンスターの不意の襲撃で心臓が止まるかと思うくらいギョッとさせられたり、怖いもの見たさに抗えないスリル好きな人にとって、ホラーというジャンルはこの上ない刺激に満ちた娯楽である。
だが恐怖とは本来、できることなら感じたくない不快な感情であるはずだ。
それなのになぜ人は、脳味噌を貪るゾンビやチェーンソーを振りかざす狂人がもたらす恐怖をわざわざ求めるのだろうか?
【お化け屋敷で娯楽的恐怖を検証】
恐怖で楽しさを感じる。専門家はその不思議な現象について、心拍数の上昇や脳内で分泌されるホルモンといった生理学的な刺激が関係しているのではないかと睨んできた。
この仮説の検証を試みたのが、『Psychological Science』(11月2日付け)に掲載された研究だ。
デンマーク、オーフス大学のマルク・マルムドルフ・アンデルセン氏らは、商業施設のお化け屋敷に被験者に入ってもらい、そのときの反応を心拍計や隠しカメラを通じてリアルタイムで観察・分析した。
お化け屋敷は全50部屋で構成され、ゾンビをはじめとする怪物が突然突進してくるといった、観客を驚かせるさまざまな仕掛け満載の本格的なものだ。
これを体験した被験者には、彼らが主観的に感じた恐怖や楽しさを評価する質問にも回答してもらった。
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【恐怖刺激が適度なときに楽しいと感じる】
実験の結果、恐怖と楽しさの関係をグラフにすると、U字を逆さまにしたような形になることが判明したという。
恐怖刺激が足りないと、楽しいとは感じられない。だが、あまりにも恐ろしすぎるとそれもまた楽しいとは感じられない。
恐怖から楽しさを感じるには、退屈すぎずそれでいて怖過ぎない適度な恐怖でなければならないようだ。
「恐怖から喜びを感じる仕組みを調べた結果、喜びが最大化される”スイートスポット”らしきものを発見しました」と、アンデルセン氏は語る。
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【適度な生理学的逸脱が楽しさにつながる】
また心拍数との比較からは、通常の生理学的状態から適度に外れた場合に楽しさを感じているらしいことが示唆されている。
普段の状態から大幅に、しかも長時間外れたままになってしまうと、その恐怖は楽しさではなく本物の恐怖になってしまう。
ちなみにアンデルセン氏によると、こうしたことは”遊び”ともよく似ているという。たとえば好奇心がむくむくと湧いてくるのは、しばしば予測が適度に裏切られた場合なのだという。さらに遊びの楽しさもやはり、適度な不確実性と意外性が大きく関係しているのだそうだ。
どうやらホラーファンは、適度な意外性を楽しむ遊びのように、適度な恐怖で遊んでいるというのが真相であるらしい。
当然のことだが人には個人差がある。ホラーがまったくダメな人もいる。この研究結果が全員に当てはまるわけではないということをお忘れなく。
References:psychologicalscience/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:人はなぜ恐怖体験を面白いと感じるのか?お化け屋敷で検証(デンマーク研究) http://karapaia.com/archives/52297101.html
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