火星で酸素と水素が現地調達できる。塩水を電気分解する新技術が登場(米研究)

火星の塩水をそのまま電気分解して酸素と水素を作り出す技術 image by:ESA
 火星に水がある。それ自体は喜ばしいことである。
今後の有人計画を進める上で有利なことだろう。だが残念なことに火星は極寒の地である。そうした環境でも凍っていない水というのは塩分濃度がとてつもなく高いのだ。

 塩水を飲料水として利用するにしても、「電気分解」して酸素(もちろん呼吸用)と水素(燃料)を作るにしてもまずは塩分を除去しなければならない。これをやるには多大なコストと手間がかかる。

 そこで今回、塩水をそのまま電気分解して酸素と水素を入手する技術が考案された。
この技術は地球の海の塩水にも応用可能だという。
【マイナス36度の環境で塩水を直接電気分解】

 アメリカ、セントルイス・ワシントン大学のエンジニアグループは、塩水をそのまま電気分解して酸素と水素を入手する装置を考案した。

 しかもただ塩水を電気分解できるだけではない。マイナス36度の火星に近い環境であっても利用することができるのだ。

 一般に電気分解するには、不純物が含まれておらず、脱イオン化された水が必要なため、それがコストを押し上げる。だが新しい装置は最適な水でなくても利用できるために、大幅にコストを削減することができる。
これは火星だけでなく、地球においてもメリットがあることだという。

 「火星の塩水を電気分解する装置は、火星やそれよりもっと遠い場所へのミッションにおけるロジスティクスを劇的に変えるでしょう。また地球でも有効で、海を酸素源と燃料源にする道が開ます」と、ヴィジャイ・ラマニ教授は語る。

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Lujendra Ojha、Jacob Buffo、Suniti Karunatillake、Matthew Siegler [2020]
【既存のシステム比25倍の生成力】

 たとえ一時的であるとしても火星で生活し、さらに地球に帰還するには、水や燃料といった資源を現地調達する必要がある。

 現在火星へ向かっているNASAの火星探査機「パーサヴィアランス」に搭載されている「MOXIE(Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment)」という装置は、大気に含まれる二酸化炭素を酸素に変換することができる。

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7 Minutes of Terror: How Perseverance Will Land on Mars

 ラマニ教授らが開発した塩水電気分解装置は、ルテニウム酸鉛パイロクロニアの陽極とプラチナ入りの炭素陰極を特徴としており、同じ電力でMOXIEの25倍の酸素を発生させ、さらに水素まで作り出すことができる。


 火星探査での利用だけでなく、たとえば潜水艦に搭載して、地球の海水から酸素を補給しながら深海底の調査を進めるといったことも可能であるそうだ。

 この研究は『PNAS』(11月30日付)に掲載された。

References:New tech can get oxygen, fuel from Mars's salty water/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:火星で酸素と水素が現地調達できる。塩水を電気分解する新技術が登場(米研究) http://karapaia.com/archives/52297163.html