子供たちの体が毛に覆われる事態に。胃薬と育毛剤を取違える医療ミスでおおかみ男症候群を発症した事例(スペイン)

胃薬と育毛剤の取り違えで多毛症となった子供たち frolicsomepl/pixabay
 昨年夏、スペインで幼い子ども17人が、胃薬として処方されたシロップ薬を服用した後、全身が毛に覆われるというという事態が起きた。

 その原因は、医薬品製造会社の梱包段階で胃薬と脱毛治療薬を取り違えるというミスが発生したことによる。


 子供たちは「おおかみ男症候群」(多毛症)を発症したとみられており、多くの市民の怒り、責任者への強い処罰が求められていた。

 ところが、事件から1年以上経った今でも製薬会社から何の対応もなく、一部の子供たちは今でも多毛症に苦しんでいるという。スペインの地元メディア『EL ESPANOL』などが伝えている。
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O.C., una de los 17 bebes con el falso sindrome del hombre lobo por un jarabe

【医薬品の取り違えミスで、幼児ら発毛剤を誤飲】

 スペインのコスタ・デル・ソルで、乳児を含む17人の子供に全身に毛が生える「オオカミ男症候群(多毛症)」に似た症状が現れたのは、2019年のこと。

 発症した子供の1人を特集したスペインメディア『El Espanol』によると、当時生後22週未満の娘に濃い口髭が生えていることに気付いた両親は、心配して小児科で受診させたという。

 しかし、この時には原因がわからなかった。
医師から、双方の家族に過度の発毛歴があるか否かを尋ねられた両親は首を横に振ることしかできず、受診後も娘の体毛が日に日に成長し、毛に覆われる姿を見て不安を募らせた。

 症状は悪化し、口の周り以外にも額や顔全体、肩、背中、指や足など至る所に黒くて濃い毛が生えた娘を連れて再び小児科を受診したところ、服用した薬について尋ねられ、原因が発覚した。

 この幼児は、他の多くの赤ちゃん同様、胃食道逆流症に苦しんでいたため、医師からシロップの薬を処方されて服用していたという。

 胃酸の逆流や消化不良治療には、オメプラゾールという成分が入った薬が一般的だ。しかし、薬局で処方されたシロップには、胃のむかつきを緩和させるオメプラゾールではなく、髪の成長を刺激する脱毛症の治療に使用されるミノキシジルという育毛剤が入っていた。

 原因は、南部マラガにある医薬品製薬会社『ファルマキミカスル(FarmaQuimica Sur)』が、会社施設内でオメプラゾールと記載されたケースに誤ってミノキシジルを梱包し、そのまま各地の薬局へ配達してしまったことによる医療ミスによるものだった。


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Omeprazol hace crecer el pelo a ninos espanoles | RT Play

【多毛症を発症した17人の子供のうち複数は未だ苦しむ】

 製薬会社による医薬品取り違えミスがニュースで報じられる頃には、17人の子供がその薬品を服用しており、全身から濃い毛が生えるという同じような症状を発症していた。

 あってはならない医療ミスを知った市民らは激怒。当時は、調査が開始され、当局は責任者は裁判にかけられるだろうと発表をしていたが、事件から1年以上経った今でも、誰も責任を問われていないことが明らかになった。

 去年の時点では、ミスが発覚したロットは全て回収されており、発毛剤を知らずに服用してしまった子供たちも服用を中止したため、症状は回復する見込みと伝えられていた。

 しかし、多毛症を発症した子供たちを持つ複数の家族の弁護士は、トレラベガ裁判所で「複数の子供たちの体毛は今も成長し続けており、苦しんでいる」と非難し、責任者への処罰を求めた。

 なお、スペイン医薬品健康製品庁(AEMPS)は、昨年9月に影響を受けた12人の子供は、回復もしくは回復期(治療停止後1~5か月)にあるが、別の5人の症例については進捗状況がまだ評価されていないため、不明と発表している。


written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:子供たちの体が毛に覆われる事態に。胃薬と育毛剤を取違える医療ミスでおおかみ男症候群を発症した事例(スペイン) http://karapaia.com/archives/52297180.html