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2017年に太陽系を訪れ、史上初の恒星間天体と認定された「オウムアムア」だが、その正体は未だはっきりせず、専門家による議論が繰り広げられている。
異星人の宇宙船であるという仰天の仮説や、水素の氷であると主張する説などが提唱されているが、最新の研究では、また別の仮説が提唱されている。
『Journal of Geophysical Research: Planets』(3月16日付)に掲載された論文によれば、その正体は冥王星に似た系外惑星の欠片で窒素の氷でできているという。
定期的に光を放ち加速までする奇妙な天体「オウムアウア」 オウムアムアはこれまで観測されてきたどの彗星とも似ていない。なにしろ太陽系の外からやってきたばかりか、まるで灯台のように光まで放っていたのだ。
残念ながら、その姿をはっきりと捉えることができた望遠鏡はない。しかし定期的な発光のパターンから、葉巻のような細長い形状か、あるいは円盤のような平らで幅広な形状のどちらかで、回転していたと推測されている。
奇妙なことに、オウムアムアは太陽を通過する際に加速までしていた。彗星もまた加速するが、望遠鏡を覗けばその原因となる水蒸気を観察することができる。しかしオウムアムアにそのようなものはなかった。
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UFO仮説と水素の氷仮説 だからこそ、ハーバード大学の著名な天文学者アヴィ・ロエブ教授は、光を帆で受けて推進力に変える異星人の宇宙船なのではないだろうかと、型破りな仮説を提唱した。
一方、もう少し常識的な仮説もある。それは細長い葉巻型をした水素の氷であるという仮説だ。
この説では、水素の蒸発によって、太陽のそばを通過したときの加速を説明することができる。
しかし問題点もある。凝固点が絶対零度に近い水素が凍るほど寒い場所が宇宙のどこにあるのか不明な点と、仮にそれが形成されたとしても、微かな宇宙マイクロ波背景放射だけでも解けてしまうだろう水素の氷が、太陽系に到達するまで残るものか疑わしい点だ。
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ESOcast 167: VLT sees `Oumuamua getting a boost水素ではなく窒素の氷という新説 そこでアリゾナ州立大学の研究者が新たに提唱しているのは、氷は水素ではなく、窒素でできているという説だ。
窒素の氷は、宇宙を移動しながら表面がゆっくりと蒸発する。そのため、お風呂の石鹸がだんだんと平らになってくるように、幅広の円盤状になったとしてもおかしくはない。また水素と同様に、蒸発した窒素が望遠鏡によって観察されることもない。冥王星で実際に観察された窒素の氷 しかも水素の氷とは違って、過去、窒素の氷が実際に見つかったこともある。それは2015年に探査機ニュー・ホライズンズが発見した、冥王星の表面に散りばめられた輝く窒素の氷だ。
スティーブン・デッシュ氏らの試算によれば、そうした氷は、衝突によって50メートルを超える無数の欠片を撒き散らし、そのうち80%は星間宇宙へと飛ばされた可能性が高いという。
仮に太陽系外に冥王星に似た星があるとすれば、星間宇宙には無数の窒素の氷が漂っていることになる。
また直径がサッカー場未満、厚さ75メートルの氷の窒素円盤なら、ちょうどオウムアムアのように太陽系内を回転しながら通過すると考えられるという。
「おそらくオウムアムアの正体の謎は解明されたと思います」と、デッシュ氏はAmerican Geophysical Unionで述べている。
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冥王星の3D予想図/iStock
まだUFOという可能性も捨てきれない しかし窒素の氷説にも問題がないわけではない。それは水素が宇宙でもっとも一般的な物質であるのに対して、窒素はずっと稀で、星間宇宙を漂う窒素の氷はやはりかなり少ないと考えられることだ。
はたしてオウムアムアの真の正体は何なのか? その答えは、今後登場する次世代望遠鏡によって明らかにされるかもしれない。
ずっと薄暗い天体でも観察できる高性能望遠鏡ならば、もっとたくさんの恒星間天体を発見できるようになるはずだ。
その結果、オウムアムアが氷ではなく、UFOであると判明する、そんな可能性だって絶対にないわけではない。
References:scitechdaily / livescience/ written by hiroching / edited by parumo
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2017年に太陽系を訪れ、史上初の恒星間天体と認定された「オウムアムア」だが、その正体は未だはっきりせず、専門家による議論が繰り広げられている。
異星人の宇宙船であるという仰天の仮説や、水素の氷であると主張する説などが提唱されているが、最新の研究では、また別の仮説が提唱されている。
『Journal of Geophysical Research: Planets』(3月16日付)に掲載された論文によれば、その正体は冥王星に似た系外惑星の欠片で窒素の氷でできているという。
定期的に光を放ち加速までする奇妙な天体「オウムアウア」 オウムアムアはこれまで観測されてきたどの彗星とも似ていない。なにしろ太陽系の外からやってきたばかりか、まるで灯台のように光まで放っていたのだ。
残念ながら、その姿をはっきりと捉えることができた望遠鏡はない。しかし定期的な発光のパターンから、葉巻のような細長い形状か、あるいは円盤のような平らで幅広な形状のどちらかで、回転していたと推測されている。
奇妙なことに、オウムアムアは太陽を通過する際に加速までしていた。彗星もまた加速するが、望遠鏡を覗けばその原因となる水蒸気を観察することができる。しかしオウムアムアにそのようなものはなかった。
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UFO仮説と水素の氷仮説 だからこそ、ハーバード大学の著名な天文学者アヴィ・ロエブ教授は、光を帆で受けて推進力に変える異星人の宇宙船なのではないだろうかと、型破りな仮説を提唱した。
一方、もう少し常識的な仮説もある。それは細長い葉巻型をした水素の氷であるという仮説だ。
この説では、水素の蒸発によって、太陽のそばを通過したときの加速を説明することができる。
だが彗星とは違って、水素の蒸気なので目には見えない。
しかし問題点もある。凝固点が絶対零度に近い水素が凍るほど寒い場所が宇宙のどこにあるのか不明な点と、仮にそれが形成されたとしても、微かな宇宙マイクロ波背景放射だけでも解けてしまうだろう水素の氷が、太陽系に到達するまで残るものか疑わしい点だ。
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ESOcast 167: VLT sees `Oumuamua getting a boost水素ではなく窒素の氷という新説 そこでアリゾナ州立大学の研究者が新たに提唱しているのは、氷は水素ではなく、窒素でできているという説だ。
窒素の氷は、宇宙を移動しながら表面がゆっくりと蒸発する。そのため、お風呂の石鹸がだんだんと平らになってくるように、幅広の円盤状になったとしてもおかしくはない。また水素と同様に、蒸発した窒素が望遠鏡によって観察されることもない。冥王星で実際に観察された窒素の氷 しかも水素の氷とは違って、過去、窒素の氷が実際に見つかったこともある。それは2015年に探査機ニュー・ホライズンズが発見した、冥王星の表面に散りばめられた輝く窒素の氷だ。
スティーブン・デッシュ氏らの試算によれば、そうした氷は、衝突によって50メートルを超える無数の欠片を撒き散らし、そのうち80%は星間宇宙へと飛ばされた可能性が高いという。
仮に太陽系外に冥王星に似た星があるとすれば、星間宇宙には無数の窒素の氷が漂っていることになる。
また直径がサッカー場未満、厚さ75メートルの氷の窒素円盤なら、ちょうどオウムアムアのように太陽系内を回転しながら通過すると考えられるという。
「おそらくオウムアムアの正体の謎は解明されたと思います」と、デッシュ氏はAmerican Geophysical Unionで述べている。
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冥王星の3D予想図/iStock
まだUFOという可能性も捨てきれない しかし窒素の氷説にも問題がないわけではない。それは水素が宇宙でもっとも一般的な物質であるのに対して、窒素はずっと稀で、星間宇宙を漂う窒素の氷はやはりかなり少ないと考えられることだ。
はたしてオウムアムアの真の正体は何なのか? その答えは、今後登場する次世代望遠鏡によって明らかにされるかもしれない。
ずっと薄暗い天体でも観察できる高性能望遠鏡ならば、もっとたくさんの恒星間天体を発見できるようになるはずだ。
その結果、オウムアムアが氷ではなく、UFOであると判明する、そんな可能性だって絶対にないわけではない。
References:scitechdaily / livescience/ written by hiroching / edited by parumo
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