
credit:Gilles San Martin / WIKI commons
寄生虫と言えば、宿主の栄養を奪ったり、ゾンビ化させたりとあまり良いイメージがない。だが、逆に宿主の長寿を約束するという、アリの寿命を延ばす寄生虫が発見されたそうだ。
『Royal Society Open Science』(5月19日付)に掲載された研究によると、その不思議な関係は「Temnothorax nylanderi」というムネボソアリ属のアリとその腸内に潜むサナダムシの一種「Anomotaenia brevis」との間に見ることができる。
【寄生されると女王アリに匹敵する寿命に】
独ヨハネス・グーテンベルク大学マインツの研究グループは、3年間にわたり58のアリの巣を観察した。すると観察期間が終わる頃、寄生虫に感染していない個体はすべてが死んでしまっていたのに対して、感染した個体は半数が生き残っていることが判明したのだ。
調査期間が短すぎて、寄生されることでアリの寿命がどのくらい延びるのか定かではない。だが20年生きることもある女王アリに匹敵するかもしれないという。
このアリの体は、若いときには黄色だが、歳をとるにつれて徐々に茶色く変色する。だが感染アリはいつまで経っても黄色いままだ。
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credit:SUSANNE FOITZIK / JOHANNES GUTENBERG UNIVERSITY MAINZ
【更には安楽生活ももたらされる】
寄生虫がもたらすのは長寿だけではない。安楽な生活までもたらす。寄生アリはちっとも働かなくなり、巣の中でゴロゴロ過ごすだけになる。
それなのに周囲のアリたちは、甲斐甲斐しくも寄生アリの面倒を見るようになる。ときには女王アリより仲間の関心を引きつけることすらあるという。
【悪魔の契約の代償は?】
だが甘い声でささやく悪魔との取引は代償をともなうものだ。この寄生虫も例外ではない。
寄生アリは長寿と安楽を享受することができる。だが巣の中の仲間たちにはより大きな負荷がかかり、早死にするようになるのだ。
さらに寄生された宿主も良い思いをするだけでは済まされない。ある日、巣にキツツキが襲来する。感染していないアリたちは蜘蛛の子を散らすかのように逃げていく。だがだらけ切った寄生アリは逃げることもなく、そこで一巻の終わりとなる。
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寄生虫はキツツキの腸内で産卵し、フンと一緒に地上にばら撒かれる。エサを求めるアリたちがこのフンを食べてしまったとき、再び悪魔との契約が交わされる。
【女王アリの遺伝子を操作】
詳しい調査からは、寄生虫が女王アリに関連する遺伝子を操作していることが判明したという。
アリが女王アリになったとき、特定の遺伝子にスイッチが入り寿命が延びる。
寄生虫はどうやらその遺伝子をいじっているようなのだ。さらにアリ同士のコミュニケーションに利用される化学シグナルを操作し、仲間に世話を焼いてもらうよう仕向ける。
ところで人間界でも近頃、悪魔憑きの案件が増えているのだという。うっかり契約を交わして大変なことにならないように、悪魔について知っておくのもいいだろう。
References:Parasite grants ants "eternal youth" – but there's a dark side/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:悪魔の契約なのか?アリの寿命を延ばす寄生虫が存在する。その目的は? https://karapaia.com/archives/52302315.html
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