ソクラテスの薬殺刑に使用された猛毒植物「ドクニンジン」がアメリカで満開の時期を迎える

 現在、アメリカのオハイオ州で、その昔ソクラテスの処刑用毒薬として用いられたことで知られている有毒植物「ドクニンジン(poison hemlock)」が満開の時期を迎えている。

 自然由来の植物なら体に優しいと思ったら大間違いで、自由に動け回れない植物だからこそオーバーキルな毒を蓄える。
使い方次第では薬となるが、人をダメにする麻薬物質も植物から抽出されるし、人を死に至らしめるほどの植物も存在する。

 このドクニンジンは、北米で最も危険な植物の1つと言われており、触れれば水ぶくれができ、誤って食べると死に至る可能性もあるという。

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Poison Hemlock — The Plant We Love To Hate【有毒植物のドクニンジンがオハイオ州で満開】
 ドクニンジンは、小さく白い花が傘のような房状に密集した一見かわいらしい植物だが、その名の通り有毒植物として知られている。
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 ニンジンやセロリ、コリアンダーなどセリ科の仲間の一部と同じく、沼地や淡水の湖の付近など湿度の高い土地で育つこの植物は、現在アメリカのオハイオ州中部で大量発生し、満開の花を咲かせているという。

 2019年には、同州南部で広がったことが報告されていたが、今では州全体に散布しており、ペンシルベニア州でも勢いを広げて満開の時期を迎えているそうだ。
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 専門家はこのように述べている。
ドクニンジンは、北米で最も致命的な植物の1つです。

これには、コニインという毒性の高いピぺリジンアルカロイド化合物が含まれており、哺乳類の呼吸不全や死を引き起こします。

根は、葉や茎よりも毒性が強いですが、種子を含む植物の全ての部分が危険であるとみなす必要があるでしょう。

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【食用植物と似ているため誤食の恐れが】
 ドクニンジンは、乾燥した状態になると毒性が弱まるが、それでも有毒に変わりはない。しかし、他の食用のセリ科の植物と非常に似ているため、見分けが困難だと専門家は語る。
Queen Anne's laceと呼ばれているワイルドキャロットと見た目がとても似ています。
ワイルドキャロットは、根を生で食べることも可能ですし、調理にも使用されることがあります。

ですが、それと似ているドクニンジンを誤って食べてしまい、致命的・偶発的な中毒を引き起こすというケースがあります。

放牧された家畜動物は、ほとんどの場合勘が働くのか、牧草地に広がっているドクニンジンを口にしない賢さを持っていますが、干ばつなどで他に餌がなくなってしまった時には食べる可能性もあるので、家畜に被害がないよう注意することも重要です。

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【触れると水ぶくれ、食べると命の危険も】
 一見、素人には食べても問題ないセリ科の植物との見分けが困難なドクニンジン。しかし、他のセリ科の植物の緑色の茎とは異なり、ドクニンジンの茎は紫っぽい色であることが唯一の見分けのポイントとなるそうだ。

 2年に1度の周期で開花するドクニンジンは、1年目は15~20センチ程度の小さな植物だが、2年目になると急速に成長し、2メートル近くにもなる。

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 触れただけでその部分が水ぶくれを起こし、誤って食べると致命的にもなるこの花が現在満開シーズンを迎えているアメリカでは、ただそれを避けるしか今のところ方法はないようだ。

 万が一、根絶する場合は、燃やさないようにと専門家はアドバイスしている。
燃やすと、毒成分が空気中に出て肺に吸い込む可能性があります。切り取って埋め立て地に持ち込む方がいいでしょう。
 ちなみに、イギリスでは今の時期、同じくセリ科の多年生植物で有毒植物の「ジャイアント・ホグウィード」が、野原のあちこちで2メートルほどの高さに成長し、こちらも軽く触れただけで痒みと水ぶくれを発症させるため、人々に恐れられている。

追記(2021/06/25)本文を一部修正して再送します。


Top image:photo by Pixabay /References:USA Today / written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:ソクラテスの薬殺刑に使用された猛毒植物「ドクニンジン」がアメリカで満開の時期を迎える https://karapaia.com/archives/52303418.html