野生のカピバラの群れが高級住宅地に襲来。困惑する住民だが、元々はカピバラの生息地だった(アルゼンチン)
image credit:Jaime Dantas/Unsplash

 温厚で人懐こいカピバラは、日本では動物園の人気者だが、生息地であるブラジルやアルゼンチンでは、野生のカピバラが様々な環境に存在する。

 だがアルゼンチンでは、地域住民との間にトラブルが発生しているようだ。
高級住宅地に、ここ数週間にわたり野生のカピバラが群れで出没しては、ゴミ箱を荒らしたり、排泄物をまき散らしたりしているという。

 どうやらその高級住宅地は、そもそもカピバラや他の野生生物が生息していた湿地帯を開拓してできた宅地で、専門家らは「人がカピバラの居場所だった土地に侵略して来たので、カピバラは単に取り戻そうとしているだけ」と語っている。

アルゼンチンの高級住宅地に野生のカピバラの群れが出没 ここ数週間、南米アルゼンチンのメディアは、ブエノスアイレスの北に位置するゲーテッドコミュニティのノルデルタ地区に生じている住民とカピバラの関係を報道し続けている。

 というのも、この高級住宅地に頻繁に野生のカピバラが群れを成して出没しているのだ。

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 ノルデルタ地区は、2000年に南米でアマゾンに次ぐ第2の重要な川として知られているパラナ川の湿地帯を開拓してできた宅地である。

 絵画のように美しい湖や小川に囲まれたその地域は、ブエノスアイレスでは「憧れの住宅地」となり、物件は人気でかなり高い。

 しかし、環境保護主義者たちはこのゲーテッドコミュニティの存在理由に異議を唱えている。

 その場所は、元々カピバラを含む様々な種の野生生物の生息地だったからだ。路上を徘徊しゴミを漁りペットが襲われたと訴える人も 現在、約4万の住民が住んでいるノルデルタ地区だが、2019年以降カピバラの出没に頭を抱えるようになった。

 世界最大のげっ歯類であるカピバラが、群れで通りを歩き回ったり、交通妨害をしたり、ゴミ箱を漁ったり、更にはペットを襲われたという住人もいて、トラブルが頻繁に発生しているという。

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 ワサワサと群れでやってくるカピバラたちは、庭を破壊するだけではなく排泄物も落としていく。

 当初は、住宅地に姿を現すようになったカピバラに対して友好的な関係を築いていた住民たちだったが、最近では勃発するトラブルが多すぎて、複雑な心境のようだ。


 飼い犬をカピバラに襲われたという男性住人は、このように語っている。
オレオというシュナウザーを飼っているのですが、窓から2匹のカピバラがオレオに噛みついている姿を見て驚愕しました。

オレオがカピバラを怖がらせようと何かしたわけではないと思います。

オスとメス両方いましたが、メスは妊娠していたように見えました。オスはそんなメスが攻撃されないよう庇っているようでした。

私が庭へ出ると、2匹は湖の方へ逃げて行きました。
去年の森林火災で生息地が減少したことも原因か カピバラは天敵が少ないため。住民らは、今何か手を打たないとこのままではもっと数が増えて手に負えなくなってしまうと、かなり心配しているようだ。

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 これに反して、冷ややかに事態を見つめているのは環境保護主義者や動物専門家らだ。

 アルゼンチン生態学者のエンリケ・ヴィアーレさんは、このように説いている。
カピバラが住宅地を侵略しているのではなく、人間がカピバラの生態系に侵入しているのです。

政府の支援を受けている裕福な不動産開発業者は、自然の中で住めるという夢を顧客に売り込むため、自然を破壊し、住宅開発を行ったのです。
 カピバラがたびたび住宅地に出没する結果になったのは、そこがかつて生息地だったからに他ならず、「彼らは単に自分たちの土地を取り戻しに来ているだけに過ぎない」と動物保護団体も言及している。

 また、2020年に大規模な森林火災が発生し、カピバラの生息地が広範囲により焼失してしまったことも、群れを住宅地へと追い立てる要因になったのではとも言われている。

 このように、アルゼンチンでは現在カピバラの住処となる湿地帯が減少の一途を辿っているという。

 ノルデルタ地区だけでなく、もしかしたら今後他の都市にも、カピバラが群れで姿を見せる日が来るかもしれない。

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Giant rodents annoy Argentine upscale neighborhood

 なお、カピバラはげっ歯類最大の種であり、成獣は体長1メートル、最大60kgにもなる。性格は非常に穏やかで、人間になつくことからペットとしても人気があるが、朝夕住宅周辺を10~20匹の群れでウロウロと徘徊するカピバラを見る度、住民らは心中穏やかではないようだ。

written by Scarlet / edited by parumo

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