
この説は、当時の常識に反していたために、ほとんど無視されてしまったが、最近、先端技術で化石を再度検査したところ、その説が正しかったことがわかった。
しかもそれだけではない。その三葉虫が複眼の中に複眼を持つ「ハイパーアイ」の持ち主であることまで判明したのだ。
3億9000万年前の三葉虫の化石から視神経を発見か? 2度の大量絶滅をなんとか生き延びたものの、3度目のペルム紀に絶滅してしまった古生代を代表する海生の節足動物「三葉虫」は、現在も多くの化石が残されている。
それは1970年代のこと、ドイツの化石マニアであるヴィルヘルム・シュテュルマー氏による三葉虫の研究が、専門家たちの間で物議を醸したことがある。
シュテュルマー氏はドイツ、シーメンス社の放射線部門の責任者で、ミニバンにX線装置を搭載して、発掘現場に出かけるほどの大の化石好きだった。
職業柄、彼はX線について誰よりも熟知していたが、あいにく化石の専門家ではなかった。そのため、「3億9000万年前の三葉虫の化石から視神経を発見した」という彼の主張を真面目に受け止める学者はほとんどいなかった。
当時の常識では、化石に残されるのは歯や骨などの硬い部分だけで、腸や神経のような柔らかい部分が残るとは考えられていなかったのだ。