世界最古の幽霊か?3500年前の古代バビロニアの粘土板に記された幽霊画
credit: The British Museum
 3500年前のものと思われる、バビロニアの粘土板に描かれていたのは、恋人に導かれてあの世へと導かれる幽霊の姿だった。

 上の画像はその輪郭を白い線でなぞったもので、一部しかはっきり確認できないが、これは世界最古の幽霊画である可能性が高いという。


 この粘土板は、これまで見過ごされてきた、大英博物館の保管庫の所蔵品の中から発見されたそうだ。

エクソシズムの儀式を描いたものか?幽霊が冥界に導かれていく場面 約3500年前のバビロニアの粘土板に描かれていたのは、髭を生やした幽霊が、恋人によって冥界、永遠の幸福へと導かれていく場面だという。

 これは、エクソシズムの儀式の一例といえる。幽霊が生者の世界に戻ってきてしまうきっかけとなった特定の問題に対処して、不要な幽霊をこの世から排除するのだ。

 この粘土版の絵の場合、幽霊にあちらの世界へ戻ってもらうためには、なんとしても同伴者が必要だったようだ。

 腕を前に伸ばして歩いている幽霊の手首は、女性が持っているロープにつながれている。
添えられている説明文には、彼らをうまいこと冥界に送り出すための儀式の詳細が記されている。

[画像を見る]

左側が発見された粘土板。右側が描かれた絵の輪郭を白い線でなぞったもの / image credit: Photo c British Museum, line drawing c James Fraser and Chris Cobb for The First Ghosts世界最古の幽霊画の可能性 大英博物館の中東部門の学芸員で楔形文字の世界的権威でもある、アーバイン・フィンケル博士は、この粘土版はこれまで見過ごされてきた、紛れもない古代の見事な作品だと言っている。
これは明らかに男性の幽霊で、惨めな姿をしています。長身で痩せこけ、髭を生やした幽霊が家の中でうろついていたら、誰でも嫌でしょう。

この幽霊があの世に戻るのに必要としていたのは恋人だったのではないかと、最終的に分析しています
生前のこの男性になにがあったのか、想像せずにはいられないでしょう。
"ああ、神さま、おじのヘンリーが戻って来た"と生きている者は嘆いたかもしれません。

おそらくおじのヘンリーは、3人の妻を亡くしたやもめだったのかもしれません。結婚すれば、家を出ていくのは誰もが知っていることですが、このような解釈に達したのは、単なる空想だけではありません。

この絵は、ある種の明確なメッセージを含んでいるのです。質の高い文章と完璧な作図能力のおかげといえます。幽霊を追い払うために、ベッドの相手をあてがった図と考えた人がいるのは、とてもおもしろい
すっかり忘れ去られていた古代バビロニアの粘土板 フィンケル博士は、この粘土版は、これまで誤まった解釈をされてきたことに気づいた。


 粘土板に上から光を当てて見ないと、幽霊の姿は浮かび上がってこないため、19世紀に大英博物館がこれを入手して以来、一度も展示されたこともなく、すっかり忘れ去られていたのだ。
一見、なにも文字がないように見えるため、おそらくかえりみられることがなかったのでしょう。でも、明かりの下でちゃんと調べてみると、悠久の時を越え、驚くような状況の人物像が浮かび上がってきたのです。

これよりも古い幽霊の絵を所蔵している人はいないと思われますので、ギネス記録ものでしょう


[画像を見る]

楔形文字の研究家、アーバイン・フィンケル博士 / image credit:Adam Szedlak / WIKI commons粘土板の後ろには幽霊の扱い方を指南した文章 粘土版の半分は失われていて、その大きさは人の手のひらにおさまるほど小さい。だが、裏には、人に憑りついて離れない幽霊の取り扱い方を指南した文章がしっかり書かれている。

 儀式では、男女の像をひとつずつ作ることも書かれている。
男には普段着を着せ、旅の装備をほどこす。女には、4枚の赤い衣服を着せ、紫の布をまとわせる。ゴールドのブローチを与え、寝床、椅子、敷物、タオルも用意し、櫛やフラスコを持たせる。

日の出とともに太陽に向かって、儀式の準備をする。紅玉髄の器にビールを満たしたものをふたつ用意し、特殊な器を置いて、ビャクシンの香炉をそなえる。

占い師が使うようなカーテンを引き、これらの道具類と一緒に男女の像を所定の場所に置いて、次の名を唱える。
"シャマシュ(太陽の神であり、夜は冥界の審判者)"

そして、文章は"決して後ろを振り返ってはいけない"という警告で締めくくられている。
 粘土版は、エクソシストの家か神殿にあった魔術書の一部だったのではないかと、フィンケル博士は考えている。

 折しも、ハロウィンの時期に合わせて幽霊が現われたようだ。この発見は、11月11日に刊行予定のフィンケル博士の著書『The First Ghosts: Most Ancient of Legacies』の中で取り上げられている。

 フィンケル博士自身は、いかにも幽霊が出そうな、薄気味悪い大英博物館の保管庫ですら幽霊を見たことはないという。

 王の図書室では、何人もの人たちが、異様な高さのところで人の頭と肩が動いているのを目撃しているという。


 懐疑的な人たちは、頭から否定しているが、現在の床の下にあるもともとの床が実際に低かったことが判明し、彼らがほぼ正しかったことになる。

 フィンケル博士は、この幽霊画を展示したいと思っている。このような遺物は、私たちの先祖をより身近に感じさせてくれるからだという。
人が幽霊に対して恐怖を覚えたり、及び腰になるなどの特性は、現代の私たちにとってより身近に感じられ、人間というものを魅力的なものにしてくれます。3500年前にも確実にあった感情で、今と変わらないことがわかるからなのです。

こうした文化について、多くの人に知ってもらいたいものです。現代のハリウッドでは、古代のホラーといえば、必ずエジプトが出てきます。

バビロンの地下世界が粘土板に描かれているようなものなら、相変わらず変わっていなのでしょう。それを心に留めておいてもらいたいのです
References:Figures of Babylon: oldest drawing of a ghost found in British Museum vault | British Museum | The Guardian / 3500-year-old Babylonian Ghost Image Discovered in British Museum Vaults! / written by konohazuku / edited by parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。