
credit:Jose-Manuel Benito / WIKI commons
エチオピアで発見された現生人類の直接の祖先であると考えられている人種に、新しい名前が提案された。その名は「ホモ・ボドエンシス(Homo bodoensis)」である。
彼らが生きていたのは、今から77万4000年~12万年前の「チバニアン」(中期更新世)と呼ばれる時代だ。
この時期、アフリカではホモ・サピエンス(現生人類)が生まれ、ヨーロッパでは親戚のネアンデルタール人が生まれた。人類史にとって、それだけ重要な時代である。
しかし、この時代の人類の進化はあまり解明されておらず、そのために「中期の混乱」という厄介な状況になってしまっており、今回の命名は、こうした混乱を解消するうえで重要なことであるそうだ。
混乱が生じている旧人類の分類 今回の名称は、アフリカ大陸とユーラシア大陸で発見されたチバニアンの化石を再評価した結果として、提案された。
これまで、そうした化石は「ハイデルベルク人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)」か「ローデシア人(ホモ・ローデシエンシス)」のどちらかに分類されてきた。
しかし、この2種の人類には複数の定義があり、しばしば矛盾することさえあった。そのために人類学者が「中期の混乱」と呼ぶ、わかりにくい状況になってしまっている。
カナダ、ウィニペグ大学のミリヤナ・ロクサンディク氏は、「この時代の人類の進化について語るのは不可能でした。地域ごとのヒト違いを説明する適切な用語がないからです」と、この混乱した状況について語る。
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現代人の直接祖先と思われる人種も新たな学名「ホモ・ボドエンシス(Homo bodoensis)」 / image Credit: Ettore Mazza初期のネアンデルタール人もハイデルベルク人に分類されていた さらに最近のDNA鑑定によって、ヨーロッパで発掘された「ハイデルベルク人」とされる化石が、じつは初期「ネアンデルタール人」のものであることが明らかになっている。
となると、ハイデルベルク人という名は無駄なものになる。
東アジアの化石についても同じような状況だ。顔をはじめとする数多くの特徴が、同時期のヨーロッパやアフリカの化石とは違っており、ハイデルベルク人という名称はもはや適切ではないのだ。
さらに混乱させるのが、同時期のアフリカの化石が「ハイデルベルク人」と「ローデシア人」の両方の名前で呼ばれてきたことだ。
特にローデシア人は定義が曖昧で、あまり広く受け入れられてこなかった。また植民地支配下のアフリカで悪名を残したセシル・ローズを連想させる(ローデシアは彼の名にちなむ)のも好ましくない。
今回ハイデルベルク人とローデシア人にかわる新しい名称として、「ホモ・ボドエンシス」が提案されたのは、こうした事情からだ。
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ホモ・ボドエンシスのイメージ図 / image credit:Ettore Mazzaホモ・ボドエンシスは人類の直接の祖先 この名が広く受け入れられれば、今後、アフリカと地中海東部で発見されたチバニアンの化石は、「ホモ・ボドエンシス」と呼ばれ、ハイデルベルク人とローデシア人の名は消える。
ホモ・ボドエンシスは、1976年にエチオピアのボドダールで発掘された60万年前の頭蓋骨にちなむもの。
現代人の直接の祖先で、ネアンデルタール人や謎の多いデニソワ人(シベリアやチベットで発見されたネアンデルタール人の親戚)に連なる系統とは別系統とされる。
一方、ヨーロッパで発見された化石は、ネアンデルタール人に分類される。ただし、南東部で発見された一部の化石については、やはりホモ・ボドエンシスと呼ばれるとのことだ。
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ホモ・ボドエンシスのイメージ図 / image credit:Ettore Mazza人類の進化を明確にするため 共同執筆者であるハワイ大学マノア校のクリストファー・ベイ氏によると、新しい名称は「厄介な問題を解消し、人類の進化における重要な時期について明確に伝える」ことが目的であるそうだ。
それは簡単なことではない。名称を変更するには、動物名法国際審議会の厳格なルールを守らねばならないからだ。
だがロクサンディク氏は、「新しい分類名は、学者が使ってこそ生きてくるものです」と、新しい名前が長く使われるであろうことに自信をのぞかせている。
この研究は『Evolutionary Anthropology』(21年10月28日付)に掲載された。
References:Resolving the “Muddle in the Middle” – Experts Name New Species of Human Ancestor / written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
エチオピアで発見された現生人類の直接の祖先であると考えられている人種に、新しい名前が提案された。その名は「ホモ・ボドエンシス(Homo bodoensis)」である。
彼らが生きていたのは、今から77万4000年~12万年前の「チバニアン」(中期更新世)と呼ばれる時代だ。
この時期、アフリカではホモ・サピエンス(現生人類)が生まれ、ヨーロッパでは親戚のネアンデルタール人が生まれた。人類史にとって、それだけ重要な時代である。
しかし、この時代の人類の進化はあまり解明されておらず、そのために「中期の混乱」という厄介な状況になってしまっており、今回の命名は、こうした混乱を解消するうえで重要なことであるそうだ。
混乱が生じている旧人類の分類 今回の名称は、アフリカ大陸とユーラシア大陸で発見されたチバニアンの化石を再評価した結果として、提案された。
これまで、そうした化石は「ハイデルベルク人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)」か「ローデシア人(ホモ・ローデシエンシス)」のどちらかに分類されてきた。
しかし、この2種の人類には複数の定義があり、しばしば矛盾することさえあった。そのために人類学者が「中期の混乱」と呼ぶ、わかりにくい状況になってしまっている。
カナダ、ウィニペグ大学のミリヤナ・ロクサンディク氏は、「この時代の人類の進化について語るのは不可能でした。地域ごとのヒト違いを説明する適切な用語がないからです」と、この混乱した状況について語る。
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現代人の直接祖先と思われる人種も新たな学名「ホモ・ボドエンシス(Homo bodoensis)」 / image Credit: Ettore Mazza初期のネアンデルタール人もハイデルベルク人に分類されていた さらに最近のDNA鑑定によって、ヨーロッパで発掘された「ハイデルベルク人」とされる化石が、じつは初期「ネアンデルタール人」のものであることが明らかになっている。
となると、ハイデルベルク人という名は無駄なものになる。
東アジアの化石についても同じような状況だ。顔をはじめとする数多くの特徴が、同時期のヨーロッパやアフリカの化石とは違っており、ハイデルベルク人という名称はもはや適切ではないのだ。
さらに混乱させるのが、同時期のアフリカの化石が「ハイデルベルク人」と「ローデシア人」の両方の名前で呼ばれてきたことだ。
特にローデシア人は定義が曖昧で、あまり広く受け入れられてこなかった。また植民地支配下のアフリカで悪名を残したセシル・ローズを連想させる(ローデシアは彼の名にちなむ)のも好ましくない。
今回ハイデルベルク人とローデシア人にかわる新しい名称として、「ホモ・ボドエンシス」が提案されたのは、こうした事情からだ。
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ホモ・ボドエンシスのイメージ図 / image credit:Ettore Mazzaホモ・ボドエンシスは人類の直接の祖先 この名が広く受け入れられれば、今後、アフリカと地中海東部で発見されたチバニアンの化石は、「ホモ・ボドエンシス」と呼ばれ、ハイデルベルク人とローデシア人の名は消える。
ホモ・ボドエンシスは、1976年にエチオピアのボドダールで発掘された60万年前の頭蓋骨にちなむもの。
現代人の直接の祖先で、ネアンデルタール人や謎の多いデニソワ人(シベリアやチベットで発見されたネアンデルタール人の親戚)に連なる系統とは別系統とされる。
一方、ヨーロッパで発見された化石は、ネアンデルタール人に分類される。ただし、南東部で発見された一部の化石については、やはりホモ・ボドエンシスと呼ばれるとのことだ。
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ホモ・ボドエンシスのイメージ図 / image credit:Ettore Mazza人類の進化を明確にするため 共同執筆者であるハワイ大学マノア校のクリストファー・ベイ氏によると、新しい名称は「厄介な問題を解消し、人類の進化における重要な時期について明確に伝える」ことが目的であるそうだ。
それは簡単なことではない。名称を変更するには、動物名法国際審議会の厳格なルールを守らねばならないからだ。
だがロクサンディク氏は、「新しい分類名は、学者が使ってこそ生きてくるものです」と、新しい名前が長く使われるであろうことに自信をのぞかせている。
この研究は『Evolutionary Anthropology』(21年10月28日付)に掲載された。
References:Resolving the “Muddle in the Middle” – Experts Name New Species of Human Ancestor / written by hiroching / edited by parumo
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