GoogleがAIによる新薬の開発事業を設立。デジタル生物学に参戦
 Googleの親会社「Alphabet」が、新たにベンチャーを設立する。その目的は、AI(人工知能)で新薬の開発に挑むことだ。


 「デジタル生物学」という新しい分野の先駆者として、AIで薬剤の発見や設計のプロセスを加速し、人類にとってもっとも恐るべき病気の治療法を発見することが、企業の使命であるそうだ。

AIを投入すべき最重要分野を生物学・医学に設定 Googleの親会社である「Alphabet」は、傘下の人工知能企業「DeepMind (ディープマインド)」を通じて、10年以上前から最先端のAIを研究し続けてきた。

 その手法はユニークそのもの。汎用的な人工知能システムを開発するために、しばしばゲームが実験台にされてきた。

 10の360乗(1の下にゼロが360個!)ものパターンがあるとされる複雑な囲碁で、人工知能「AlphaGo」がトップ棋士を破ったその衝撃は今も記憶に新しい。

 こうした研究によって進化してきたAIは、現実世界の問題を解決できるだけのパワーを手に入れつつあると、ディープマインドのCEOであり、新会社のCEOにも就任するデミス・ハサビス氏は述べる。


 そんな同氏が、AIを投入すべき最重要分野として情熱を注いでいるのが、生物学や医学だ。

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AIを使った新薬開発会社を立ち上げ 新たに設立される「Isomorphic Labs(アイソモーフィック・ラボ)」は、最先端の計算法とAIで、新薬開発スピードを飛躍的に加速し、病気の治療法を発見することを使命とする。

 AIはただ単にデータを分析するだけはない。複雑な生物現象の強力な「予測モデル」や「生成モデル」を作り出すためにも利用される。

 昨年、ディープマインドのAIシステム「AlphaFold2」が、50年来の壮大な挑戦である「タンパク質の折りたたみ」(タンパク質の3次元構造)を予測する画期的な方法として認められた。

 これは、AIが生物学の分野で重要な役割を果たせることを示した最初の実例だが、このようなことが今後もどんどん起こるだろうと、ハサビス氏は説明する。


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生物学と情報科学の共通点 ハサビス氏は、もっとも基礎的なレベルでは、生物学は「とびきり複雑でダイナミックな情報処理システム」であると述べる。

 だとするならば、生物学と情報科学には共通する構造がある。つまり両者は「同型写像(アイソモーフィック)」なのかもしれない(このアイデアが社名の由来だ)。

 生物のプロセスは、複雑かつ乱雑であるために、シンプルな数式で表されることはないだろう。

 それでも、数学が物理学にとって必要不可欠なツールになったのと同じように、AIは生物学にとって必要不可欠なツールになるかもしれない。

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 ハサビス氏は、今後ディープマインドとアイソモーフィック・ラボのCEOを兼任。
両者を連携させつつ、新会社の戦略・ビジョン・企業文化を策定するとのこと。

 そのために生物学、医薬品化学、生物物理学、医師、コンピューター科学など各分野における一流の人材を集め、国際的なチームを作る予定であるそうだ。

 すでに採用を始めているようなので、我こそはと思う人がいれば、こちらから申し込んでみるといいだろう。

References:Isomorphic Labs | Blog / written by hiroching / edited by parumo

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