遺伝子編集技術を応用して、マウスの完璧なオス・メスの産み分けに成功したそうだ。
研究実験では、オスのみ、メスのみのマウスが必要とされることがあるが、この技術により何十万匹もの不要なマウスを廃棄処分しなくてすむようになる。
また、他の種の性別の産み分けが可能になれば、畜産業界などでも有効活用できるかもしれない。
遺伝子編集ツールを利用したオス・メス産み分け 英フランシス・クリック研究所とケント大学のグループが考案したのは、DNAを切って遺伝子に手を加えることができる編集ツール「CRISPR-Cas9」の頭の冴えた使い方だ。
CRISPR-Cas9は、「Cas9酵素」と「ガイドRNA」の2つのパーツで構成されている。
Cas9酵素は、DNAを切断するいわばナイフとしての役割がある。他方ガイドRNAは、Cas9酵素を適切な位置まで連れていく道案内役だ。
研究グループが考案したのは、CRISPR-Cas9を半分にして、片方を父親のX染色体かY染色体のいずれかに乗せ、もう片方を母親のX染色体に乗せてやるという方法だ。
たとえば父親のY染色体と母親のX染色体に、半分に分けたパーツを乗せたとする。
すると父親の精子と卵子が受精し、そのときの性染色体がXYだった場合のみ、CRISPR-Cas9が発動するようになる。
発動すれば、DNAの複製・修復を担っている遺伝子(Top1遺伝子)を切断し、受精卵がそれ以上発達できなくしてしまう。
生まれる子供の性別は、父親と母親それぞれから1つずつもらう性染色体で決まる。XYをもらえばオス、XXならメスになる。
だからXYでCRISPR-Cas9が発動するようにしてやれば、オスが生まれなくなる。
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photo by iStock
産み分けの成功率100%、しかも出産数は減らない 研究グループがこの方法をマウスで試したところ、100%性別の産み分けに成功したと、『Nature Communications』(21年12月3日付)で報告している。
意外なことに、片方の性別が生まれなくなっても、生まれてくる子供の数が半減したりはしなかったという。確かに減りはしたが、それでも元の61~72%はきちんと生まれたのだ。
研究グループの推測によると、マウスのような動物は、体の中で必要以上に多くの卵子を作っていることが原因であるという。
これは、発達初期に受精卵がダメになっても子供の数が減らないようにする、保険のようなメカニズムだと考えられている。
また、家畜などを飼育するうえで、性別に多少の偏りがあっても問題ないということでもある。
さらに生き残った子孫は、遺伝子編集による有害な影響が一切なかったそうだ。
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マウス以外の動物への応用に期待 今回標的にされたTop1遺伝子は、どの哺乳類にも備わっているものだ。だから、マウスだけでなく、他の動物でも生み分けができると期待されるそうだ。
特に畜産業界では、牛など、オスよりメスのほうが需要が高い動物は多いため、産み分けできる技術が求められている。
また、哺乳類ではないが、鳥類のニワトリのオスは卵を産まないためにすぐに殺処分されてしまう辛い現実がある。
References:CRISPR-Cas9 effectors facilitate generation of single-sex litters and sex-specific phenotypes | Nature Communications / Gene-editing used to create single sex mice litters | Crick / New gene-editing technology creates single-sex mice / written by hiroching / edited by parumo
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研究実験では、オスのみ、メスのみのマウスが必要とされることがあるが、この技術により何十万匹もの不要なマウスを廃棄処分しなくてすむようになる。
また、他の種の性別の産み分けが可能になれば、畜産業界などでも有効活用できるかもしれない。
遺伝子編集ツールを利用したオス・メス産み分け 英フランシス・クリック研究所とケント大学のグループが考案したのは、DNAを切って遺伝子に手を加えることができる編集ツール「CRISPR-Cas9」の頭の冴えた使い方だ。
CRISPR-Cas9は、「Cas9酵素」と「ガイドRNA」の2つのパーツで構成されている。
Cas9酵素は、DNAを切断するいわばナイフとしての役割がある。他方ガイドRNAは、Cas9酵素を適切な位置まで連れていく道案内役だ。
研究グループが考案したのは、CRISPR-Cas9を半分にして、片方を父親のX染色体かY染色体のいずれかに乗せ、もう片方を母親のX染色体に乗せてやるという方法だ。
たとえば父親のY染色体と母親のX染色体に、半分に分けたパーツを乗せたとする。
すると父親の精子と卵子が受精し、そのときの性染色体がXYだった場合のみ、CRISPR-Cas9が発動するようになる。
発動すれば、DNAの複製・修復を担っている遺伝子(Top1遺伝子)を切断し、受精卵がそれ以上発達できなくしてしまう。
生まれる子供の性別は、父親と母親それぞれから1つずつもらう性染色体で決まる。XYをもらえばオス、XXならメスになる。
だからXYでCRISPR-Cas9が発動するようにしてやれば、オスが生まれなくなる。
反対に父親のX染色体にパーツを乗せれば、XXで発動し、メスが生まれなくなる。
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産み分けの成功率100%、しかも出産数は減らない 研究グループがこの方法をマウスで試したところ、100%性別の産み分けに成功したと、『Nature Communications』(21年12月3日付)で報告している。
意外なことに、片方の性別が生まれなくなっても、生まれてくる子供の数が半減したりはしなかったという。確かに減りはしたが、それでも元の61~72%はきちんと生まれたのだ。
研究グループの推測によると、マウスのような動物は、体の中で必要以上に多くの卵子を作っていることが原因であるという。
これは、発達初期に受精卵がダメになっても子供の数が減らないようにする、保険のようなメカニズムだと考えられている。
また、家畜などを飼育するうえで、性別に多少の偏りがあっても問題ないということでもある。
さらに生き残った子孫は、遺伝子編集による有害な影響が一切なかったそうだ。
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マウス以外の動物への応用に期待 今回標的にされたTop1遺伝子は、どの哺乳類にも備わっているものだ。だから、マウスだけでなく、他の動物でも生み分けができると期待されるそうだ。
特に畜産業界では、牛など、オスよりメスのほうが需要が高い動物は多いため、産み分けできる技術が求められている。
また、哺乳類ではないが、鳥類のニワトリのオスは卵を産まないためにすぐに殺処分されてしまう辛い現実がある。
ニワトリにも産み分けさせることができれば、倫理的な畜産業を実現するための選択肢になり得ることだろう。
References:CRISPR-Cas9 effectors facilitate generation of single-sex litters and sex-specific phenotypes | Nature Communications / Gene-editing used to create single sex mice litters | Crick / New gene-editing technology creates single-sex mice / written by hiroching / edited by parumo
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