かつてハリウッド映画界ではアスベスト(石綿)が人工雪として使用されていた
image credit:Ye Olde Science

 かつてアスベスト(石綿)は、安価で、耐火性など多様な機能を有していることから様々な物に利用されていた。

 だが、極めて細い繊維状のけい酸塩鉱物が飛散しやすく、人が吸入すると健康被害を起こす可能性があることが明らかとなった。


 現在は石綿を吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められ、製造や使用を禁止している国も多い。

 アメリカでは、その危険性が明るみになるまで、アスベストがハリウッド映画などの人工雪として使用されていたという。

かつて人工雪として使用されていたアスベスト 1920年代後半まで、アメリカではハリウッド映画のセットや一般家庭では、人工雪として綿(コットン)を主成分としたものを使用していた。

 しかし、1928年に消防署が綿でできた人工雪の安全性に疑問を投げかけ、火災の危険性があることを指摘すると、安価な代替品としてアスベストが使用されることとなる。

[動画を見る]

 これは、アスベストが人体に深刻な健康被害をもたらす危険因子であるということが証明される前のことだが、その後何十年もアスベストを人工雪として使い続けており、その事実は衝撃的だ。

[画像を見る]

image credit:Wikipedia.org

他の人工雪よりもリアルに見えた雪 当時、「ピュアホワイト」や「スノードリフト」といったブランドで販売されていたアスベスト含有の人工雪は、耐火性だけでなく、1928年まで使用されていた綿や塩、小麦粉などの素材を使ったそれよりも、はるかにリアルに見えたそうだ。

 革新的な装飾はすぐに流行し、やがてハリウッドで映画撮影のために日常的に使用されるようになった。

 最も有名な例は、ドロシーとその友人たちに雪が降り、邪悪な魔女の呪文から目を覚ます「オズの魔法使い」のシーンだ。

  アスベストの人工雪が豊富に使用されていたことは、そのシーンを見れば一目瞭然だ。

[動画を見る]

第二次世界大戦に伴い、アスベスト人工雪は徐々になくなる アスベスト雪は、1940年代初頭まで利用されていたが、その後ほとんど使われなくなった。

 第二次世界大戦時となり、海軍艦艇を耐火性にするため、大量のアスベストが必要となったため、民間の利用が控えられたのだ。

 1950年になる頃には、泡沫、水、砂糖、石鹸からなる成分を含むスプレー式の泡が代わりに使用されていたという。


 だが専門家は、「つや消し」の外観を持つ当時のヴィンテージ装飾には、おそらくアスベストが含まれていると警告している。

 Asbestos.comではこのように伝えている。
アスベストはかつて人工雪として販売され、木や花輪、装飾品にまき散らされていた。これらの製品は長年製造されていないが、世代から世代へと受け継がれてきた最も古い装飾には、まだ少量のアスベストが含まれている可能性がある。
 アスベストを含む人工雪が最初に注目を集めたのは2009年頃で、産業衛生学者でアスベスト対策活動家のトニー・リッチさんが、写真共有プラットフォームFlickrでアスベストの人工雪の写真を投稿したことがきっかけだという。

[動画を見る]

9 @ 9: Asbestos was used as snow in old moviesアスベストによる健康被害 独立行政法人環境再生保全機構によると、アスベスト(石)は、ヒトの髪の毛の直径よりも非常に細く、肉眼では見ることができない極めて細い繊維からなっているため、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸入されてヒトの肺胞に沈着しやすい特徴があるという。

 吸い込んだ石綿の一部は異物として痰の中に混ざり体外へ排出されるが、石綿繊維は丈夫で変化しにくい性質のため、肺の組織内に長く滞留することになる。

 この体内に滞留した石綿が要因となって、肺の線維化やがんの一種である肺がん、悪性中皮腫などの病気を引き起こすことがあるという。

 石綿繊維により長期間にわたって肺に炎症がおき、組織が傷つけられ続けることで線維化が生じる。また、発生した活性酸素によりDNAが損傷された結果、遺伝子異常が起こり、細胞ががん化する可能性が考えられている。

 発がん性は、石綿の種類によって異なり、角閃石族のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)の方がクリソタイル(白石綿)よりも発がん性が高いとされている。

References:Abestos Snow – The Most Dangerous Fake Snow in History / written by Scarlet / edited by parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ