まだ食べられる食品の売れ残りを集め、再販拠点を作るミラノの食品ロスの取り組み
 食品ロス(フードロス)とは、本来はまだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことだ。世界全体で、全食料の33%(年間にして13億トン)が無駄になっていると推定されている。


 しかし、大量の食品廃棄が起こっている一方で、世界の人口の10分の1の、およそ8億人が十分な食糧を得られていないという現状がある。

 イタリアの都市ミラノでは7年前から食品ロスに対する取り組みを行っている。現在市内3か所に、スーパーや商店から、まだ食べられる食品を集めた販売拠点を設置し、格安で販売している。
イタリアのミラノ市が取り組む食品ロス問題
 ミラノ市は2015年、政府機関やフードバンク、大学、NGO、民間企業と協力し、市全体の食品ロスに対するプロジェクトを開始した。

 2019年には、市内で売れ残った食品を集め、販売店を開設。現在、市内には3か所の販売拠点を設けている。


 一見、他のスーパーマーケットと同じような外観だが、店の中の棚を埋めている食べ物は、地元の卸売業者や商店、民間企業やスーパーマーケットから寄付された食品だ。

 まだ食べられる食品が廃棄される無駄を防ぐため、この販売店に持ち込まれ、格安で再販されているのだ

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image credit:Comune di Milano

 市は、この再販場を運営し、必要に応じて食料の購入援助をしながら在庫を補っていく。

 販売店で買い物をする客は、その場でお金を支払う必要はなく、このプログラムで提供されるプリペイドカードから支払うシステムになっている。

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image credit:Comune di Milano

食料品の販売だけでなく、育児支援やカウンセリングも
 この食品ロスのための販売店は、1店舗につき毎年最大130トンもの食品が節約されると報告されている。これは約26万食、つまり市の総食品廃棄物の約30%に相当する。

 また、この店舗が提供するのは食料だけではない。
現在ある3店舗のうちの1つでは、法的援助やカウンセリング、育児支援などの社会的サービスも提供している。

 これらの店舗は、ミラノ市自治体とNGO Terre des Hommes Italyが所有しており、2015年からスタートしたフードポリシー「より持続可能なフードシステム作成」を目的としているそうだ。

 ミラノ市では、こうした余剰食品を再分配する新たな方法の開発を通じて、2030年までに食品廃棄物を半減させることを目標としており、今後数か月以内には更に2か所の店舗を設置する計画をしている。

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pixabay
 食品ロスの取り組みが、現時点で既に成功を収めているミラノ市について、ボローニャ大学の農業政策教授アンドレア・セグレ氏は、このように述べている。

世界中の各都市がこの取り組みを適用できます。ある程度の知識、そして熱意ある行動力が必要ですが簡単に真似できることです。

 なお2021年10月に、このプログラムは英ウィリアム王子によって設立された環境イノベーションを支援するためのイニシアチブとなる最初の「Earthshot賞」を受賞。食品ロス対策のモデル都市となるミラノへ、更なる開発を行うための支援金となる賞金100万ポンド(約1億5600万円)が贈られたという。

日本の現状
 ちなみに日本の場合、食品ロスの量は、年間570万トン(令和元年度推計値)に登るという。その内訳は、事業活動を伴って発生する食品ロスが309万(54%)、各家庭から発生する食品ロスが261万トン(46%)だそうだ。

 日本人の1人当たりの食品ロス量は1年で約45kg、これは日本人1人当たりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと近い量だという(食品ロスとは:農林水産省

 日本でも、農林水産省主導の元、食品ロスの削減に努めている。そのイメージキャラクターは「ろすのん」で口癖は語尾に「のん」がつくようだ。


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image credit:食品ロスとは:農林水産省

References:Milan Is Winning the Fight Against Food Waste - RTBC / written by Scarlet / edited by parumo

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