母性本能が狩猟本能を越えた時。ライオンがヌーの子供と寄り添いながら歩く姿が目撃される
 ネコ科の動物の中でも、特にライオンのメスは、捕食対象であるはずの動物の子供を助ける姿が幾度か目撃されている

 弱肉強食の厳しい自然界において、こういった光景が見られるのは、きまぐれかもしれないが、母性本能が狩猟本能を越えたということなのかもしれない。

 今回、アフリカのタンザニアにある国立公園で、メスのライオンがヌーの子供と平原を寄り添いながら歩く姿が目撃された。

 なぜ、ライオンがこのヌーの子供を襲わないのか、またなぜ一緒にいるのかは不明だが、ヌーの子はライオンの体に顔を押し付け、かなり慕っており、ライオンもそれを受け入れている。

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Lioness shows 'maternal instinct' for wildebeest calf and leads it back to its herdメスのライオンがヌーの子供と並んで歩く 1月10日、アフリカのタンザニアにあるセレンゲティ国立公園は、メスのライオンがヌー(ウシカモシカ)の子供とセレンゲティの平原を並んで歩く姿をTwitterに投稿した。

 草食動物のヌーは、ライオンにとって捕食対象だ。ヌーは、カモシカやガゼルなどの他の草食動物よりも動きが遅く、バッファローより危険性が低いため、ライオンにとっては最も狙いやすい獲物のひとつとなる。

 タンザニア国立公園局のパスカル・シェルテットさんは、英メディアでこのように述べている。
メスライオンの母性が、狩猟本能に勝ったのでしょう。
狩りの最中、空腹のメスライオンがヌーの赤ちゃんを助けたことも 成体のライオンは、1日当たり5~7.3kgほどの肉を消費する必要があるとされているが、毎日狩りに成功する確率は低い。

 そのため、ライオンが食事の機会を見逃すこのような行動は、やはり非常に珍しいこととなるようだ。しかし、珍しくはあっても初めての事例ではない。

 2015年に公開されたドキュメンタリーでは、おなかをすかせたメスライオンがヌーの群れを襲い、ヌーの赤ちゃんが目の前に取り残される。

 ところが、ライオンはヌーの赤ちゃんを襲わないのだ。赤ちゃんはライオンを敵とは思わずにスリスリとすり寄っていくのだが、食べようとしない。

 空腹なのにもかかわらず、ライオンはその場を去っていった。その後ヌーの赤ちゃんは母親との再会を果たしている。

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Baby Wildebeest Treats Lioness Like Mom

 他にも、ヒョウの赤ちゃんにお乳を上げたり、傷ついた子ギツネをオスライオンから守ったメスライオンもいた。

 自然界でライオンたちを四六時中監視することは不可能だ。人間が把握しているだけでこれだけの事例があるということは、もしかしたらほぼ毎日のように、どこかでメスライオンが、そのあふれ出る母性で、空腹を我慢しながら捕食対象の子供たちを助けているのかもしれない。

written by Scarlet / edited by parumo

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