
かつて一世を風靡した、ドキュメンタリー番組『Tucker Carlson original(タッカー・カールソン・オリジナル)』の最新エピソード『The End of Men(男たちの終焉)』の予告編が公開された
それは、男らしさの象徴と考えられているホルモン「テストステロン」が減少していることに焦点を当てたもので、タッカー・カールソンが一押ししている「ふぐり日光浴」をしている男性が登場する。
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ふぐり日光浴で男性ホルモンを! 『The End of Men(男たちの終焉)』の予告編では、ジョン・F・ケネディが力と運動を賛美し、ぽっちゃりと弛んだ子供が増えたことを嘆いている。場面は変わり、過去50年にわたって男性の精子が減り続けてきたと語られる。
木を切り、牛乳を絞り、銃をぶっ放し、肉を焼き、戦う、マッチョ感みなぎる上半身裸の男たち。やがて映像はクライマックスへ
『2001年宇宙の旅』の壮大な交響曲が鳴り響く中、両手を広げた雄大なポーズで「ふぐり日光浴」をする男性が登場する。
この映像は、米保守系のニュース番組「FOXニュース」がここ10年推してきた「テストステロン」で育まれる男らしさを大いにアピールするものだ。
ふぐり日光浴で本当に男性ホルモンが分泌されるのか? 予告編の最後に登場するのは「赤色光療法」のイメージだ。Epic documentary from Tucker Carlson Originals: The End of Men. pic.twitter.com/xxhmOIpBqR
— Dr. Benjamin Braddock (@GraduatedBen) April 16, 2022
『タッカー・カールソン・オリジナル』に登場した自称「ブロメオセラピー(まぶだち療法)」の専門家は、LEDライトで睾丸を照らすと、男性ホルモンと言われている「テストステロン」の分泌が促されると説明する。
紫外線や赤色光でテストステロンが増加する可能性については、一応実験記録があるが、査読付きの論文ではないし、二重盲検法によるものでもない。
またテストステロンは、1日を通して大きく変化し、運動や食事、あるいは新しく恋人ができることでも増加する。
アメリカではテストステロンが政治と関連付けられている FOXニュースが、人類が抱えるあらゆる問題を解決するとして、テストステロン推しなのも不思議ではない。In his new special on how to raise testosterone levels in men, Tucker Carlson’s guest suggests “testicle tanning” using infrared light as a “bromeopathic” therapy. pic.twitter.com/PirerBMRyr
— Ron Filipkowski (@RonFilipkowski) April 17, 2022
同ニュースは、男性のテストステロン減少がリベラル派を広め、男らしさを喪失させているという意見を後押ししてきたし、その広告主には男性ホルモン増加サプリの業者がたくさんいる。
アメリカではテストステロンが政治と関連付けられている。かつてトランプ氏を支持する某ラジオ番組司会者は、リベラル派の広まりとテストステロンの低下を結びつけていた。
とある右派の医師などは、ヒラリー・クリントンへの投票を考える視聴者に無料でテストステロン量の測定をすると申し出てすらいた。
米国には似たような主張をする男性ホルモンサプリの広告が数多くあり、その多くはFOXニュースで流された。トランプ氏自身、自分の反対者は低男性ホルモンであると発言したことがあるという。
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Tucker: Something ominous is happening to men in America男性ホルモンは男性を男らしくするのか? こうした政治的意見を真に受けて、テストステロンを注射する人たちは大勢いる。
だが、本当のところ、テストステロンは”男性ホルモン”であり、エストロゲンは”女性ホルモン”という見方は間違っている。
男女とも、性別に関わらず両方とも持っているからだ。なにしろテストステロンは心臓の機能に重要だ。だが、その量は人によってまちまちで、多くの男性は必要以上にテストステロンを持っている。
実のところ、テストステロンはしばしばエストロゲンに変換されており、日常的に注射すると男性でありながら胸が大きくなることすらある。
確かにテストステロンが少ない男性は、疲れやすくインポになることもあり、そうした場合は補充が必要かもしれない。その一方、血中テストステロン濃度が低くても問題ない人たちもいる。
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フグリ日光浴はおすすめできない 『IFLScience』によると、ふぐりの日光浴は危険なことでもあるという。日焼けと皮膚がんとの関係は以前より知られているが、それは睾丸にも当てはまる。
そもそも睾丸は普段衣服に隠されているので、露出している皮膚に比べて日光や紫外線に弱い。
睾丸に日光を当てれば、ビタミンDが増加し、テストステロンが増えることは証明されている。だが、睾丸が他の部位に比べて日光を吸収しやすいわけではないので、あえてふぐりの日光浴をする必要はないという。
それに睾丸の熱は、精子を減らしかねない。大事なものが体の外にぶら下がっているのも、それが理由だ。睾丸に明るい光を照射すると、テストステロンが増えるという研究は他にもある。
しかしそれでも、睾丸に光を当てるべきと推奨しているわけではないし、これを利用した市販の治療法に本当に効果があると証明されているわけでもない。
References:Tucker Carlson’s answer to masculinity’s supposed crisis? ‘Testicle tanning’ | Sam Wolfson | The Guardian /Please Don't Tan Your Testicles, Even If Tucker Carlson Tells You To | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
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