スペインでヨーロッパ最大級の巨石遺跡がアボカド農園建設予定地で発見される
 南スペインのアボカド農園建設の予定地で、ヨーロッパ最大級の巨石遺跡が発見された。

 7000年前のものと推測されるこの遺跡には、500以上の立石があり、イギリス、ソールズベリーのストーンヘンジによく似たストーンサークルもふたつ、他にも、さまざまな石が点在している。


アボカド農園予定地から巨石遺跡を発見 ポルトガルとの国境に近いスペイン、アンダルシア州ウエルバ県にある、農場ラ・トーレ・ラ・ジャネラは、アボカド農園への転換が計画されていた。

 600ヘクタールに及ぶこの場所は、アンダルシア当局から、考古学的意義の可能性を調べる調査が依頼されていた。

 農園は、モンテ・ゴルド丘陵周辺を流れる、グアディアナ川左岸にある。周辺では、グレイワッケ(硬砂岩)、雲母、長石、石英などから彫り出された巨石が見つかっている。

 さらに、ふたつの立石、5つのドルメン(支石墓)、トロスと呼ばれる3つの円蓋墓、巨大な石切り場、4つのネクロポリス、その他出土品が出てきた。

 石の産地は、近くにある46の鉱山で、放棄された珪岩ハンマーや半製品ブロックが出てきた。

[画像を見る]

ウェルバ近郊のラ・トレ・ラ・ジァネラ巨石遺跡の石 / image credit:University of Huelva

 アルカラ・デ・エナレス大学先史学のプリミティバ・ブエノ=ラミレス教授は、この遺跡について、次のように語っている。
これほどコンパクトに巨石遺跡が集中し、考古学データが得られると期待される場所は、私が知る限り今のところ、ヨーロッパにはどこにもありません
 さらに、ひとつの場所ですべてが一緒に見つかる遺跡は、非常に珍しく、保存状態も素晴らしいという。

[画像を見る]

空から見たラ・トレ・ラ・ジァネラの巨石群 / image credit:University of Huelva

 この遺跡には、立石、ドルメン(巨石記念物の一種)、土塁、棺のような石櫃(シスト)、囲いなど、さまざまな種類の石が出土している。

 石の高さは、1メートルから3.5メートルとさまざま。衛星写真、航空写真、ライダーを駆使して、さまざまな石の存在を明らかにすることができた。

 「これは、イベリア半島最大、そしてもっとも多様な立石群で、ヨーロッパにおける主要な巨石遺跡です」と言うのは、このプロジェクトの責任者のひとり、ウェルバ大学のホセ・アントニオ・リナレス氏だ。


 彼らの研究は、スペインの考古学雑誌『Trabajos de Prehistoria』に掲載された。

[画像を見る]

広大な遺跡には、このような立石や台座のような巨石がたくさん建っている / image credit:University of Huelva祭祀場として利用されていた可能性
イベリア半島ではユーニクな遺跡だ。こうした立石やドルメン周辺での人間の共同活動は、先祖代々からの縄張りを固定し、集団内の結束を育み、長期間にわたる、その場所の記憶を作り出す役割を果たした可能性がある
 と論文には書かれている。

 ドルメン、埋葬塚、石櫃は、死者のための住まいとして、また先祖への供物を捧げる祭祀場として代用された可能性がある。

 周辺の共同体は、この場所を先祖とつながり、癒しを得るための社会的プラットホームとして使っていたのだろう。

 考古学者たちは、亀裂や損傷のある不完全な石は、完全なものを優先して、捨てられたらしいことに注目し、それらがなにが特別なもののために必要だったことを示した。

 また、季節の移り変わりや天体観測と、なんらかの関係あるのではないかとも推測されているが、ストーンヘンジのように証明することは難しそうだ。

 ふたつのストーンサークル(環状列石)は、丘陵の外周にあり、明らかに東を向いている。

 論文著者は、「これらは東の地平線がはっきり見える丘の上に建てられていて、そこから春分や秋分、夏至・冬至の日の出を見ることができる」と書いている。

 ほとんどの立石は、26の配列のグループになっていて、これは、天文時計や暦を模して造られたものだと考えられる。そのU字型の編成は、ポルトガルのほかの円形遺跡でも見られる。

 広い意味では、大西洋の巨石信仰が、人類最古の現象のひとつであることは確かだろう。
それは、より大きな社会的目的をもち、地域を変え、石に人間性を与えるものだった。

 イベリア半島南西部を西ヨーロッパの巨石信仰地域と理解することで、これまであまり注目されてこなかった、研究能力を拡大することができた。

[動画を見る]

References:Megalithic Spain: Incredible 5,500-Year-Old Ancient Dolmens | Ancient Architects

 石の多くは埋まったままになっており、2026年まで発掘プロジェクトが続けられる予定だ。一部は見学可能となる。

 また、スペイン西部エストレマドゥラ州バルデカニャスの貯水池では、干ばつによる水位低下で、紀元前5000年の物と推測される、環状列石の遺跡が姿を現したそうだ。

 こちらは「スペインのストーンヘンジ」と呼ばれる、巨石数十個でできた遺跡「ガダルペラルのドルメン」で、1963年の貯水池建設で水没した状態だったという。

[動画を見る]

Watch: Ancient ‘Spanish Stonehenge’ Emerges From Drought-Hit Dam

References:Unbelievable Find of Europe’s Largest Megalithic Site In Spain | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ