
意図的に力をくわえて頭蓋骨を変形させる「人工頭蓋変形」は、紀元前2000~1000年頃の中央アジアや、紀元前2650年頃のチリなど、世界各地で古くから見られる奇妙な習慣だ。
九州大学などの研究チームによる最新の分析によると、どうやら日本の一部でもこの人工頭蓋変形の習慣があったようだ。
3世紀から7世紀(弥生時代から古墳時代)に鹿児島県種子島で暮らしていた「広田人」は、後頭部が真っ平らないわゆる”絶壁頭”だったことが知られているが、どうやらこれは意図的な人工頭蓋変形の結果であることが、九州大学とアメリカ・モンタナ大学の共同研究で明らかとなった。
砂浜に墓地を作った広田人の平らな後頭部の謎 鹿児島県、種子島の南部には、3世紀(弥生時代後期)から7世紀頃(古墳時代)の墓地遺跡「広田遺跡」がある。ここで暮らしていた人々が「広田人」だ。
彼らの遺跡は古墳時代のものであるが、日本本土にある古墳とは違い、海岸の砂丘に作られているところが特徴的だ。
そこから発掘された150体以上の遺骨は、奄美・沖縄諸島でとれる貝殻から作られたバラエティ豊かな装飾品を身につけており、美しく身を飾る文化があったことがうかがわれる。
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貝でできた装飾品を身に着けた状態で埋葬されていた広田人 / image credit: Kyushu University Seguchi et al., PLOS ONE , 2023
もう1つ広田人がユニークなのは、前歯(上顎側切歯)を抜いたり、後頭部を平らにしたりと、何やら人体改造を行なっていたらしいことだ。
だがこれまで、こうした絶壁頭が何か別の習慣による偶然の結果なのか、それとも意図的に変形させたものなのかはっきりしなかった。
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Aが弥生人(上)、Bが広田人(下)。広田人の後頭部はずっと平らだ / Image credit: Kyushu University Seguchi et al., PLOS ONE , 2023意図的な人工頭蓋変形の結果であるとする研究結果 『PLOS ONE』(2023年8月16日付)に掲載された新しい研究では、最新の技術で頭蓋骨を分析し、やはり意図的に頭蓋変形した可能性が濃厚であることを明らかにしている。
九州大学の瀬口典子准教授らは、広田人の頭蓋骨を2D・3Dスキャンし、その特徴を分析。このデータを同時代の弥生人や縄文人の頭蓋骨と比べてみた。
こうした分析によると、広田人の頭蓋骨は、弥生人や縄文人のものとははっきり違っていることがわかったという。
またその平らな後頭部は、後頭骨の変形と、矢状縫合やラムダ縫合(頭のてっぺんにある頭蓋骨のつなぎ目)の陥没によるもので、意図的な人体改造の結果だろうことを示していたという。
ちなみに、男女どちらの頭蓋骨も変形しており、この点で性別による差はなかったそうだ。
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山口県、土井ヶ浜遺跡の弥生人(左)と鹿児島県種子島、広田遺跡の広田人(右)の頭蓋骨を比較したもの / Image credit: Seguchi Lab/Kyushu Universityなぜ人工頭蓋変形を行ったのかはいまだ謎 頭蓋変形は一般に、まだ幼い子供の頭に板を押し当てるなどして、頭蓋骨に力を加えることで行われる。
広田人はなぜ頭蓋骨をこのように変形させたのか?
まだ完全には解明できていないという。
だが、ひとつの仮説として、はっきり一族とわかるようにするためものものではないかと推測されている。広田人はかなり遠くまで貝の交易を行っていたので、そうした習慣が役に立った可能性があるそうだ。
この謎めいた人体改造の意味についてさらに探るため、研究チームは今後も広田遺跡の頭蓋骨を調査する予定とのことだ。
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広田遺跡で発見された変形した頭蓋骨を持つ広田人 / image credit:Image credit: Kyushu University Seguchi et al., PLOS ONE , 2023
References:Investigating intentional cranial modification: A hybridized two-dimensional/three-dimensional study of the Hirota site, Tanegashima, Japan | PLOS ONE / Hirota people of Japan intentionally deformed infant skulls 1,800 years ago / The Flattened Skulls of The Ancient Hirota People Were No Accident / written by hiroching / edited by / parumo
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九州大学などの研究チームによる最新の分析によると、どうやら日本の一部でもこの人工頭蓋変形の習慣があったようだ。
3世紀から7世紀(弥生時代から古墳時代)に鹿児島県種子島で暮らしていた「広田人」は、後頭部が真っ平らないわゆる”絶壁頭”だったことが知られているが、どうやらこれは意図的な人工頭蓋変形の結果であることが、九州大学とアメリカ・モンタナ大学の共同研究で明らかとなった。
砂浜に墓地を作った広田人の平らな後頭部の謎 鹿児島県、種子島の南部には、3世紀(弥生時代後期)から7世紀頃(古墳時代)の墓地遺跡「広田遺跡」がある。ここで暮らしていた人々が「広田人」だ。
彼らの遺跡は古墳時代のものであるが、日本本土にある古墳とは違い、海岸の砂丘に作られているところが特徴的だ。
そこから発掘された150体以上の遺骨は、奄美・沖縄諸島でとれる貝殻から作られたバラエティ豊かな装飾品を身につけており、美しく身を飾る文化があったことがうかがわれる。
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貝でできた装飾品を身に着けた状態で埋葬されていた広田人 / image credit: Kyushu University Seguchi et al., PLOS ONE , 2023
もう1つ広田人がユニークなのは、前歯(上顎側切歯)を抜いたり、後頭部を平らにしたりと、何やら人体改造を行なっていたらしいことだ。
だがこれまで、こうした絶壁頭が何か別の習慣による偶然の結果なのか、それとも意図的に変形させたものなのかはっきりしなかった。
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Aが弥生人(上)、Bが広田人(下)。広田人の後頭部はずっと平らだ / Image credit: Kyushu University Seguchi et al., PLOS ONE , 2023意図的な人工頭蓋変形の結果であるとする研究結果 『PLOS ONE』(2023年8月16日付)に掲載された新しい研究では、最新の技術で頭蓋骨を分析し、やはり意図的に頭蓋変形した可能性が濃厚であることを明らかにしている。
九州大学の瀬口典子准教授らは、広田人の頭蓋骨を2D・3Dスキャンし、その特徴を分析。このデータを同時代の弥生人や縄文人の頭蓋骨と比べてみた。
こうした分析によると、広田人の頭蓋骨は、弥生人や縄文人のものとははっきり違っていることがわかったという。
またその平らな後頭部は、後頭骨の変形と、矢状縫合やラムダ縫合(頭のてっぺんにある頭蓋骨のつなぎ目)の陥没によるもので、意図的な人体改造の結果だろうことを示していたという。
ちなみに、男女どちらの頭蓋骨も変形しており、この点で性別による差はなかったそうだ。
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山口県、土井ヶ浜遺跡の弥生人(左)と鹿児島県種子島、広田遺跡の広田人(右)の頭蓋骨を比較したもの / Image credit: Seguchi Lab/Kyushu Universityなぜ人工頭蓋変形を行ったのかはいまだ謎 頭蓋変形は一般に、まだ幼い子供の頭に板を押し当てるなどして、頭蓋骨に力を加えることで行われる。
広田人はなぜ頭蓋骨をこのように変形させたのか?
まだ完全には解明できていないという。
だが、ひとつの仮説として、はっきり一族とわかるようにするためものものではないかと推測されている。広田人はかなり遠くまで貝の交易を行っていたので、そうした習慣が役に立った可能性があるそうだ。
この謎めいた人体改造の意味についてさらに探るため、研究チームは今後も広田遺跡の頭蓋骨を調査する予定とのことだ。
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広田遺跡で発見された変形した頭蓋骨を持つ広田人 / image credit:Image credit: Kyushu University Seguchi et al., PLOS ONE , 2023
References:Investigating intentional cranial modification: A hybridized two-dimensional/three-dimensional study of the Hirota site, Tanegashima, Japan | PLOS ONE / Hirota people of Japan intentionally deformed infant skulls 1,800 years ago / The Flattened Skulls of The Ancient Hirota People Were No Accident / written by hiroching / edited by / parumo
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