イエローストーン国立公園の温泉で、古代に起源を持つ巨大ウイルスを発見
 アメリカ、イエローストーン国立公園で、湧き出る超酸性の温泉から太古のウイルスが発見されたそうだ。

 そのウイルスは「メガウイルス」という巨大なウイルスで、15億年以上前に藻類が出現したのとほぼ同時期に出現したとされるかなり古いものだ。


 しかも驚いたことに、そうしたウイルスの中には、海底の熱水噴出孔付近に生息する好熱性ウイルスの仲間もいたのだ。

 生命の誕生や進化に深く根ざすとされる、こうした温泉のウイルスは、地球の生命の起源にせまる貴重なヒントになるかもしれない。

極限環境にあるイエローストーン温泉の生態系 地球の生命の始まりは、海底から湧き上がる酸性の熱水のような極限環境だったと考えらえている。

 ならば今日の熱水環境には、生命が始まったばかりの名残が何かしら残されているのだろうか? そして現代の生命は、こうした極限環境にどうやって適応してきたのだろうか?

 それを知るために、米国ニュー・ジャージー州立大学をはじめとする研究チームは、アイダホ州、モンタナ州、及びワイオミング州に位置するイエローストーン国立公園レモネード・クリークの温泉に生息するイデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)という単細胞の紅藻(こうそう)とその周囲にいるウイルスを探ってみた。

 研究チームが、生物だけでなくウイルスにも注目するのは、それが生命の進化に重要な役割を果たしているからだ。

 生物に感染したウイルスは、その宿主の代謝を改変したり、あるいは遺伝子を取り込ませることで(遺伝子の水平伝播)、宿主の適応を手助けすることがある。

 だから熱水環境の生物とそれに感染するウイルスは、大昔の生命がどのように進化してきたのかうかがい知る貴重な手がかりになるのだ。

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photo by Pixabay温泉内に太古の巨大ウイルスを発見 すると温泉内のさまざまな環境に、紅藻と多種多様なウイルスが共存していることが明らかになったのだ。

 そうしたウイルス群は環境によって固有のものだったが、どの環境でも共通していたのは、「メガウイルス網(Megaviricetes)」という巨大ウイルスが支配的な存在だったことだ。

 このことから、巨大ウイルスは紅藻に感染することで、その進化に大きな影響を与えてきただろうことが推測された。

 そもそも両者の関係はおそらく非常に古い。温泉に生息する紅藻が出現したのは15億年以上前のことだが、ほぼ同じ時期に巨大ウイルスも出現したと考えられる。


 地球に生命が誕生したのは38億年以上前だが、それでもウイルスと紅藻の関係は、生命の歴史初期のものと言えるだろう。なにせ、多細胞動物が出現したのはようやく6億年前になってのことだ。

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photo by Pixabayウイルスは初期の生命の進化を告げている? レモネード・クリークのウイルスたちの遺伝子からは、案の定彼らが相当に古い存在であることが確認されている。

 そのタンパク質が示していたのは、レモネード・クリークのウイルスが、かなり早い時期に熱を好む能力を進化させていただろうことだ。

 つまり、彼らは温度の低い環境から熱水に引っ越してきたわけではなく、おそらくずいぶん長いこと温泉に浸かって生きてきたのだと考えられる。

 しかも興味深いのは、こうしたウイルスの中に、深海の熱水噴出孔に潜む好熱性ウイルスと関係するものがいたことだ。

 すでに述べたように、生命の素になりそうな化学物質のスープが噴出する熱水噴出孔は、地球の生命が誕生した始まりの場所の有力候補である。

 その親戚がいるイエローストーン国立公園の熱水は、もしかしたら太古の生命がどのように進化してきたのか覗き見できる、過去につながる窓なのかもしれない。

 この研究は『Communications Biology』(2024年4月9日付)に掲載された。

References:Giant Viruses With Ancient Origins Lurk In Yellowstone's Hot Springs | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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