
2018年にカラパイアでもお伝えした、オス同士のペンギンカップルを覚えているだろうか。
オーストラリアにあるシーライフ・シドニー水族館で飼育されていたスフェンとマジックの同性愛カップルは、なんと二度も卵の孵化に成功し、立派な「親」としてヒナたちを育て上げてきたことで、世界的に有名となった・
そのカップルの片割れであるスフェンが12歳の誕生日の直前に虹の橋へと旅立って行ったそうだ。
12歳の誕生日直前で亡くなったジェンツーペンギンのスフェン
シーライフ・シドニー水族館の発表によると、スフェンは2024年8月22日の朝、息絶えているところを飼育員に発見されたという。12歳の誕生日を目前に控えた死だった。
実はスフェンは、死の数日前から体調を崩しており、水族館側では安楽死も視野に入れ始めた矢先だったそうだ。
飼育下でのジェンツーペンギンの寿命は12~13歳前後とのことなので、スフェンはほぼ寿命を全うしたと言っていいのではないだろうか。
スフェンを失ったことは、ペンギンのコロニーにとっても、そして私たちのチームやスフェンとマジックの物語にインスピレーションやポジティブな影響を受けたすべての人にとって悲痛な出来事です
水族館のジェネラルマネージャー、リチャード・ディリー氏はこのように語っている。
奥にいるマジックのところへ小石を運んでいたスフェン。ジェンツーペンギンは小石を集めて巣作りをする。
彼らの巣の周りには、他のカップルよりもたくさんの小石が積み上げられていた。
2羽の雛を孵し、育て上げた同性カップル
スフェンとマジックは2018年からの6年間、仲睦まじいカップルとして過ごして来た。この間、彼らは2個の卵を温めて孵し、ララとクランシーという2羽のヒナたちの「親」となった。
2018年に生まれたララは6歳、2020年に生まれたクランシーも既に4歳になり、立派なコロニーの一員として暮らしている。
長女のララを囲んでパシャリ。
こちらは次女のクランシーと。
ペンギンたちが追悼の歌を合唱
問題はこの6年間、スフェンと共に生きて来たマジックだ。野生下でのペンギンは、パートナーの姿が見えなくなると探し回るのだという。
そこで水族館ではマジックにパートナーの死を認識させるため、スフェンの遺体との「お別れ」をさせることにした。
スフェンの姿を見たマジックは、すぐに声を上げて歌い始め、他のペンギンたちもそれに追随してコーラスに加わったという。
その様子を見ていたペンギンの飼育係ルネ・ハウエルさんは、「信じられないほど感動的な瞬間だった」と語った。
とても美しい瞬間で、その場の空気は彼らの歌声で満たされました。(スフェンが)パートナーに与えた影響をしめしており、(マジックは)パートナーがそこにいることを認識していました
水族館が投稿した、スフェンへの追悼の動画。
私たちはマジックに、彼が次のステップに進むための最良の機会を与えたと考えています。現在は繁殖期の始まりで、巣作り、餌やり、訓練への参加など、マジックに期待される行動がすべて見られます
ジェンツーペンギンは伴侶を失うと、新しい相手を探して繁殖することが多いという。だが8歳のマジックが、今後誰か別のパートナーを見つけるかどうかは、今に時点では未知数だ。
とはいえ、マジックは既に今シーズンの小石集めをスタートさせているといい、もしかしたら新しい出会いが訪れるかもしれない。
スフェンとマジックの物語は、単なる美しいラブストーリーではありません。
平等の象徴として、彼らが世界中に与えた影響は計り知れません。スフェンの遺産は、彼がマジックと分かち合った愛情と、彼らが私たちに広めてくれた重要な環境保護メッセージを通して、これからも生き続けるでしょう